6月に入った。
死ぬかと思った脱腸騒動から丸二年である。
入院騒ぎの顛末はブログでも詳細に記録し、ダイジェスト版をマンガで描いた。
鼠経ヘルニア(脱腸)まとめ
啓発マンガ「脱腸騒動記」(投稿マヴォ)
あれから2年、再発もなく、体調は結構良い。
持病だった胃腸炎や腰痛、ぎっくり腰も、手術以降はほとんど出ていない。
少なくとも数年間は放置していたヘルニアが、地味に体に負担をかけ続けていた可能性があり、それが解消されたが故の好調かもしれない。
そう言えばついこの間、ヘルニアが再発した悪夢を見た!
体調とは別に、心理的なショックはまだ残っているようだ……
胃腸の調子が良い分、体重が微増傾向(苦笑)
一旦は12キロほど落としていたのだが、手術以降2年間で5キロほど戻った感じだ。
これ以上増やさないよう、引き続き糖質制限に励む。
「糖質制限」関連記事まとめ
4月から始めたtwitterは、ブログ記事紹介を中心に、一日1〜2回のペースでぼちぼち続けている。
烏帽子九郎twitter
あらためて、「世の中にはいろんな人がいるなあ」と感心する。
最近一番びっくりしたのは、絨毯に描いた絵をひたすらアップし続けているあぎとぅ(原作版)さん。
この人、只者ではない。
むちゃくちゃ上手い。
たぶん年が近いので、描いてるネタがけっこうハマる。
おれももっと精進しないと……
こんな感じで、今月もぼちぼち行きます。
睡眠不足気味なので、夜更かしにはけじめをつけながら。
2018年06月01日
2018年06月02日
追悼:津本陽
先月5月末、作家の津本陽さんがお亡くなりになった。
当ブログでは、石山合戦や紀州雑賀衆について、あれこれ勉強を進めてきた。
その過程で、紀州出身で戦国時代の鉄砲戦術のリアルな描写を得意とする津本陽の作品についても、度々紹介してきた。
振り返りつつ、追悼にかえたい。
●新装版「雑賀六字の城」津本陽(文春文庫)
津本陽は和歌山市出身、雑賀衆の血筋に連なるという。
以前紹介した神坂次郎も同様なのだが、地元出身作家が郷土の歴史を扱う場合の強みは、なんと言っても言葉や気質、風俗、土地勘を熟知していることだろう。
鉄砲戦術や海戦術については、調べればそれなりの知識は得られるだろうが、言葉や気質についてはやはりネイティブに勝るものはない。
執筆されたのは1980年代前半。この時点で雑賀衆の内の沿海部と内陸部の利害関係をきちんとおさえ、史実の徹底的な分析を行っているのは、司馬遼太郎の先行作「尻啖え孫市」と差別化を図るには是非とも必要なことだったのではないだろうか。
司馬版「孫市」ではほとんど触れられていない部分、雑賀衆が行った様々な火気の新規開発、火薬の製造、毛利水軍と連携した海戦術の描写にも、著者の意気込みが見える気がする。
物語は雑賀の土豪の年若い末っ子・七郎丸が、石山合戦の渦に巻き込まれて地獄の戦場を駆けるようになる筋立てだ。
その視点は一貫して雑兵足軽と同じ、地を這い泥を啜り、血腥い戦争の現実を直視していくことになる。雑賀の地に住む一般民衆から見上げた場合、戦国武将の中でも人気の高い織田信長が、いかに冷酷無残な魔王に映ることか、読者は背筋の凍る思いで読み進めることになるだろう。
作中には「鈴木孫一」も登場するのだが、同じ雑賀衆からは「戦の実力は認めるものの、どこか信頼の置けない人物」と思われているところなど、実際ありそうな話なので非常に面白い解釈だ。
ただ、史実としては津本作品の方が正確なのだと思うが、司馬版「孫市」の陽性なキャラクターが存在しない戦争の、なんと殺伐として酸鼻を究めていることだろうか。
主人公が多感な十代の少年で、まだ人を殺めることに麻痺しきっていない点がせめてもの救いと言えるかもしれない。
この作品は近年、マンガ化もされており、かなり出来は良かった。
●「雑賀六字の城」全三巻 マンガ:おおのじゅんじ
津本陽の描く、戦国時代の紀州を舞台にした小説には、非常に「ご当地感」が醸し出されている。
●「鉄砲無頼伝」「信長の傭兵」(角川文庫)
タイトルに連続性がないので分かりにくいが、同じ物語の上下巻である。
主人公は紀州に鉄砲をもたらしたと伝えられる津田監物。
雑賀衆と並び称される戦国最強の鉄砲集団、根来鉄砲衆の始祖的人物だ。
物語はこの人物が紀州に鉄砲を持ち帰ったところから、石山合戦の終結までを描いている。
●「天翔ける倭寇〈上〉〈下〉」(角川文庫)
雑賀衆は鉄砲隊だけでなく、海洋交易の担い手としての面もあった。
この物語は雑賀衆の中の一団が「倭寇」として大陸に進出し、一獲千金の夢を求めて得意の鉄砲戦術で転戦を続ける様が描かれている。
これら二作、「鉄砲無頼伝」「天翔ける倭寇」については、かなり面白かったので、いずれまた単独記事で詳しく紹介してみたい。
これらの作品のセリフ回しは、戦国時代の実際の紀州言葉というわけではもちろんなく、現代の紀州(とくに和歌山市周辺)の言葉や気質をベースに再現された仮定の表現だ。
しかしそこには地元出身でないと決して醸し出せない「リアル」が、確かに存在する。
のんびりとした紀州言葉と、時に苛烈な気性の荒さの対比が、とんでもない実在感をもって迫ってくるのだ。
同じ著者、同じ時代設定のものには、以下の一冊がある。
●「火焔浄土―顕如上人伝」津本陽(角川文庫)
こちらは顕如上人を主軸に据え、石山合戦の事実関係を、小説の体裁をとりながら淡々と並べたような感じで、エンターテインメントとしては正直あまり面白い本ではない。
ただ、自分でも調べものをするときの道しるべにはなっている。
顕如上人の小説で面白いのは、こちらを参照。
地元出身、砲術や剣術も修める実践派。
紀州を舞台に「リアル」を求める場合、これ以上の水準は望みようがないはずだ。
当ブログでは、石山合戦や紀州雑賀衆について、あれこれ勉強を進めてきた。
その過程で、紀州出身で戦国時代の鉄砲戦術のリアルな描写を得意とする津本陽の作品についても、度々紹介してきた。
振り返りつつ、追悼にかえたい。
●新装版「雑賀六字の城」津本陽(文春文庫)
津本陽は和歌山市出身、雑賀衆の血筋に連なるという。
以前紹介した神坂次郎も同様なのだが、地元出身作家が郷土の歴史を扱う場合の強みは、なんと言っても言葉や気質、風俗、土地勘を熟知していることだろう。
鉄砲戦術や海戦術については、調べればそれなりの知識は得られるだろうが、言葉や気質についてはやはりネイティブに勝るものはない。
執筆されたのは1980年代前半。この時点で雑賀衆の内の沿海部と内陸部の利害関係をきちんとおさえ、史実の徹底的な分析を行っているのは、司馬遼太郎の先行作「尻啖え孫市」と差別化を図るには是非とも必要なことだったのではないだろうか。
司馬版「孫市」ではほとんど触れられていない部分、雑賀衆が行った様々な火気の新規開発、火薬の製造、毛利水軍と連携した海戦術の描写にも、著者の意気込みが見える気がする。
物語は雑賀の土豪の年若い末っ子・七郎丸が、石山合戦の渦に巻き込まれて地獄の戦場を駆けるようになる筋立てだ。
その視点は一貫して雑兵足軽と同じ、地を這い泥を啜り、血腥い戦争の現実を直視していくことになる。雑賀の地に住む一般民衆から見上げた場合、戦国武将の中でも人気の高い織田信長が、いかに冷酷無残な魔王に映ることか、読者は背筋の凍る思いで読み進めることになるだろう。
作中には「鈴木孫一」も登場するのだが、同じ雑賀衆からは「戦の実力は認めるものの、どこか信頼の置けない人物」と思われているところなど、実際ありそうな話なので非常に面白い解釈だ。
ただ、史実としては津本作品の方が正確なのだと思うが、司馬版「孫市」の陽性なキャラクターが存在しない戦争の、なんと殺伐として酸鼻を究めていることだろうか。
主人公が多感な十代の少年で、まだ人を殺めることに麻痺しきっていない点がせめてもの救いと言えるかもしれない。
この作品は近年、マンガ化もされており、かなり出来は良かった。
●「雑賀六字の城」全三巻 マンガ:おおのじゅんじ
津本陽の描く、戦国時代の紀州を舞台にした小説には、非常に「ご当地感」が醸し出されている。
●「鉄砲無頼伝」「信長の傭兵」(角川文庫)
タイトルに連続性がないので分かりにくいが、同じ物語の上下巻である。
主人公は紀州に鉄砲をもたらしたと伝えられる津田監物。
雑賀衆と並び称される戦国最強の鉄砲集団、根来鉄砲衆の始祖的人物だ。
物語はこの人物が紀州に鉄砲を持ち帰ったところから、石山合戦の終結までを描いている。
●「天翔ける倭寇〈上〉〈下〉」(角川文庫)
雑賀衆は鉄砲隊だけでなく、海洋交易の担い手としての面もあった。
この物語は雑賀衆の中の一団が「倭寇」として大陸に進出し、一獲千金の夢を求めて得意の鉄砲戦術で転戦を続ける様が描かれている。
これら二作、「鉄砲無頼伝」「天翔ける倭寇」については、かなり面白かったので、いずれまた単独記事で詳しく紹介してみたい。
これらの作品のセリフ回しは、戦国時代の実際の紀州言葉というわけではもちろんなく、現代の紀州(とくに和歌山市周辺)の言葉や気質をベースに再現された仮定の表現だ。
しかしそこには地元出身でないと決して醸し出せない「リアル」が、確かに存在する。
のんびりとした紀州言葉と、時に苛烈な気性の荒さの対比が、とんでもない実在感をもって迫ってくるのだ。
同じ著者、同じ時代設定のものには、以下の一冊がある。
●「火焔浄土―顕如上人伝」津本陽(角川文庫)
こちらは顕如上人を主軸に据え、石山合戦の事実関係を、小説の体裁をとりながら淡々と並べたような感じで、エンターテインメントとしては正直あまり面白い本ではない。
ただ、自分でも調べものをするときの道しるべにはなっている。
顕如上人の小説で面白いのは、こちらを参照。
地元出身、砲術や剣術も修める実践派。
紀州を舞台に「リアル」を求める場合、これ以上の水準は望みようがないはずだ。
2018年06月04日
2018年06月08日
反骨のカーリー、再び(川口真由美 2ndアルバムのこと)
歌い手、川口真由美2ndアルバムを聴き込んでいる。
先月発売の一枚だ。
●「人のチカラ 〜沖縄・平和を歌う2」川口真由美
川口真由美さんのことれまでにも何度か記事で紹介してきた。
去年はファーストアルバムのレビューを書いた。
反骨のカーリー 川口真由美さんのこと
私は二年前の反原発デモの時、ステージの後で彼女と少しだけ話したり、歌ったりしてとても楽しかった。
それ以来のファンだ。
今回の2ndも、直球ど真ん中のプロテストソング・アルバムである。
川口さんの歌は全て、デモや抗議行動、座り込みの現場や、暴虐に晒された人々の肉声から生まれる。
そこで弱者側に立ち、ぺしゃんこになりそうな心の「気付け薬」としてうたう歌なので、表現は限りなくストレートに、そしてシンプルになる。
極論上等
理想論上等
暴虐の「現場」で力を持ち得るのは、こうした言葉であり、声であることがよくわかるアルバムだ。
現在の商業音楽の世界では払底してしまったプロテストソングだが、歴史を遡れば、むしろそうした「反骨」こそが大衆芸能の生命線であった。
古くから各地を放浪する芸能者や民間宗教者は、「語り」によって圧政に対する反抗を力付けてきた。
近世ではこうした民間宗教者の「語り」が、一部「大道芸」に姿を変えて、「チョンガレ」「チョボクレ」などと呼ばれながら、滑稽・諧謔と鋭い風刺で庶民の喝采を浴びていた。
時には放浪する大道芸人のネットワークを巧みに利用し、情報伝達やオルグの手段として一揆のエネルギー源に活用した例もあったようだ。
●『「世直し歌」の力―武左衛門一揆と「ちょんがり」』五藤孝人(現代書館)
残念ながら現代の神社仏閣の縁日や、街頭の辻々からは、このような刺激的な音風景は姿を消してしまった。
ただ、今であれば、各地の抗議行動のシュプレヒコールやメガホンアピールの中に、そうした「世直し歌」の系譜が続いていると見ることもできる。
とくに、全国の抗議行動を遍歴しながら、巧みなリズムで盛り上げるパーカッション奏者やラッパーの皆さんに、往時の「道々の者」の姿がダブって見えることがあるのだ。
そして、今回紹介した川口真由美さんのプロテストソングスタイルも、聴く者を限りなく力づける「世直し歌」の系譜に、間違いなく連なるのである。
川口さんは放浪芸スタイルのレパートリーもお持ちのはずなので、次のアルバム制作の機会には、ぜひ選曲して欲しい!
もし可能なら、抗議活動現場の「実況録音盤」を聴いてみたい!
【関連記事】
国がための民にあらず、民のための国であれ
演歌師
先月発売の一枚だ。
●「人のチカラ 〜沖縄・平和を歌う2」川口真由美
川口真由美さんのことれまでにも何度か記事で紹介してきた。
去年はファーストアルバムのレビューを書いた。
反骨のカーリー 川口真由美さんのこと
私は二年前の反原発デモの時、ステージの後で彼女と少しだけ話したり、歌ったりしてとても楽しかった。
それ以来のファンだ。
今回の2ndも、直球ど真ん中のプロテストソング・アルバムである。
川口さんの歌は全て、デモや抗議行動、座り込みの現場や、暴虐に晒された人々の肉声から生まれる。
そこで弱者側に立ち、ぺしゃんこになりそうな心の「気付け薬」としてうたう歌なので、表現は限りなくストレートに、そしてシンプルになる。
極論上等
理想論上等
暴虐の「現場」で力を持ち得るのは、こうした言葉であり、声であることがよくわかるアルバムだ。
現在の商業音楽の世界では払底してしまったプロテストソングだが、歴史を遡れば、むしろそうした「反骨」こそが大衆芸能の生命線であった。
古くから各地を放浪する芸能者や民間宗教者は、「語り」によって圧政に対する反抗を力付けてきた。
近世ではこうした民間宗教者の「語り」が、一部「大道芸」に姿を変えて、「チョンガレ」「チョボクレ」などと呼ばれながら、滑稽・諧謔と鋭い風刺で庶民の喝采を浴びていた。
時には放浪する大道芸人のネットワークを巧みに利用し、情報伝達やオルグの手段として一揆のエネルギー源に活用した例もあったようだ。
●『「世直し歌」の力―武左衛門一揆と「ちょんがり」』五藤孝人(現代書館)
残念ながら現代の神社仏閣の縁日や、街頭の辻々からは、このような刺激的な音風景は姿を消してしまった。
ただ、今であれば、各地の抗議行動のシュプレヒコールやメガホンアピールの中に、そうした「世直し歌」の系譜が続いていると見ることもできる。
とくに、全国の抗議行動を遍歴しながら、巧みなリズムで盛り上げるパーカッション奏者やラッパーの皆さんに、往時の「道々の者」の姿がダブって見えることがあるのだ。
そして、今回紹介した川口真由美さんのプロテストソングスタイルも、聴く者を限りなく力づける「世直し歌」の系譜に、間違いなく連なるのである。
川口さんは放浪芸スタイルのレパートリーもお持ちのはずなので、次のアルバム制作の機会には、ぜひ選曲して欲しい!
もし可能なら、抗議活動現場の「実況録音盤」を聴いてみたい!
【関連記事】
国がための民にあらず、民のための国であれ
演歌師
2018年06月10日
ナマズの思い出
90年代初頭から熊野に心惹かれ、夏には毎年のように遍路に出かけるようになった顛末は、このカテゴリ熊野で継続して紹介してきた。
遍路中の食事、かの地の味覚についても、いくつか紹介してきた。
茶粥
サンマの丸干し
ひだる神
今回は熊野に向かうバスの車中での、ちょっとした思い出について。
紀伊半島南部にあたる熊野は、日本有数の山岳地帯。
かつての参詣道のうち、比較的高低差のない川沿い海沿いの何本かは、ほぼ車道に上書きされてしまっている。
そうしたルートは道幅が狭く、歩道が確保されていない区間も多い。
歩き遍路には全く向かないので、とくにこだわりがなければ、素直にバスに乗った方が良い。
バスは路線バスなので、時間帯によっては中高生と一緒になることがある。
たぶんもう二十年近く前になるが、そんなバスの中での地元の中学生男子二人の会話が記憶に残っている。
二時間ほどのバス移動中、座席でうつらうつらしていると、夏休みの部活に通っているのであろう二人のやりとりが、なんとなく耳に入ってくる。
「昨日の晩飯のナマズのかば焼き、めっちゃうまかったわ〜」
「ウナギとちゃうのん?」
「いや、ナマズ。ウナギもうまいけど、オレはやっぱりナマズの方が好きやな〜」
「へ〜。オレ、ナマズは食ったことないわ」
「いっぺん食ってみ! ウナギにも似てるんやけど、なんて言うかもっと身が柔らかくて……」
私はバスに揺られて半分寝ぼけながら、「ナマズのかば焼き、いつか食べてみよう」と考えていたが、いまだにそれは果たされていない。
なぜ今になって「ナマズのかば焼き」のことを思い出したかというと、このところ「ウナギ絶滅の危機」のニュースを度々目にするからだろう。
ウナギの絶滅の危険性についてはもう何年も前から報道が繰り返されてきたが、土用の丑の日にむけ、スーパーやコンビニ、牛丼チェーン店等の大々的な販促キャンペーンが見直されることはなかった。
一応正規の入手ルートであるなら仕方がないかとも思っていたのだが、先日以下のような報道があった。
「日本の養殖池に入れられるニホンウナギの6〜7割が違法に漁獲された可能性が高いなど、絶滅危惧種のウナギの密漁や違法取引が横行しているとする報告書をワシントン条約事務局が1日までに公表した」
これぞ「偽装大国ニッポン」の悲惨な現状である。
官も民も上から下まで目先の金を追いかけ、腐りきっているのである。
このような状態で消費が続くなら、ウナギの絶滅は不可避。
もう手遅れかもしれない。
ウナギはその生態から完全養殖が難しく、今後劇的に回復する見込みは無いのだ。
私もウナギは大好きだが、ちょっともう素直に味わうことはできそうもない。
今後、出していただいた場合を除き、自分から進んで食べることはないだろう。
そんな流れで思い出したのが、昔々の熊野の記憶である。
「ナマズのかば焼き、そう言えばまだ食べてなかったなあ……」
そう言えば何年か前、マグロの完全養殖技術で名を上げた近大が、「ウナギ味のナマズ」の開発に成功したというニュースがあった。
たぶん「実用化」にはまだまだ紆余曲折はあるのだろうけれども、ウナギの保全にプラスになってくれるといいなと思う。
と言うか、より根本的には販促キャンペーンで一つの食材を大量消費するスタイルは、消費者の方から「NO」を突き付ける見識を、そろそろ持った方が良いと思う。
同じかば焼きでも、美味しいものは他にいくらでもある。
サンマだって美味しいし、たぶんナマズはウナギに似せなくともナマズとして美味しい。
アナゴも(私が好きなのはかば焼きではないが)美味い。
絶滅危惧種を私たちの世代で食い尽くす必要は、どこにもないのだ。
遍路中の食事、かの地の味覚についても、いくつか紹介してきた。
茶粥
サンマの丸干し
ひだる神
今回は熊野に向かうバスの車中での、ちょっとした思い出について。
紀伊半島南部にあたる熊野は、日本有数の山岳地帯。
かつての参詣道のうち、比較的高低差のない川沿い海沿いの何本かは、ほぼ車道に上書きされてしまっている。
そうしたルートは道幅が狭く、歩道が確保されていない区間も多い。
歩き遍路には全く向かないので、とくにこだわりがなければ、素直にバスに乗った方が良い。
バスは路線バスなので、時間帯によっては中高生と一緒になることがある。
たぶんもう二十年近く前になるが、そんなバスの中での地元の中学生男子二人の会話が記憶に残っている。
二時間ほどのバス移動中、座席でうつらうつらしていると、夏休みの部活に通っているのであろう二人のやりとりが、なんとなく耳に入ってくる。
「昨日の晩飯のナマズのかば焼き、めっちゃうまかったわ〜」
「ウナギとちゃうのん?」
「いや、ナマズ。ウナギもうまいけど、オレはやっぱりナマズの方が好きやな〜」
「へ〜。オレ、ナマズは食ったことないわ」
「いっぺん食ってみ! ウナギにも似てるんやけど、なんて言うかもっと身が柔らかくて……」
私はバスに揺られて半分寝ぼけながら、「ナマズのかば焼き、いつか食べてみよう」と考えていたが、いまだにそれは果たされていない。
なぜ今になって「ナマズのかば焼き」のことを思い出したかというと、このところ「ウナギ絶滅の危機」のニュースを度々目にするからだろう。
ウナギの絶滅の危険性についてはもう何年も前から報道が繰り返されてきたが、土用の丑の日にむけ、スーパーやコンビニ、牛丼チェーン店等の大々的な販促キャンペーンが見直されることはなかった。
一応正規の入手ルートであるなら仕方がないかとも思っていたのだが、先日以下のような報道があった。
「日本の養殖池に入れられるニホンウナギの6〜7割が違法に漁獲された可能性が高いなど、絶滅危惧種のウナギの密漁や違法取引が横行しているとする報告書をワシントン条約事務局が1日までに公表した」
これぞ「偽装大国ニッポン」の悲惨な現状である。
官も民も上から下まで目先の金を追いかけ、腐りきっているのである。
このような状態で消費が続くなら、ウナギの絶滅は不可避。
もう手遅れかもしれない。
ウナギはその生態から完全養殖が難しく、今後劇的に回復する見込みは無いのだ。
私もウナギは大好きだが、ちょっともう素直に味わうことはできそうもない。
今後、出していただいた場合を除き、自分から進んで食べることはないだろう。
そんな流れで思い出したのが、昔々の熊野の記憶である。
「ナマズのかば焼き、そう言えばまだ食べてなかったなあ……」
そう言えば何年か前、マグロの完全養殖技術で名を上げた近大が、「ウナギ味のナマズ」の開発に成功したというニュースがあった。
たぶん「実用化」にはまだまだ紆余曲折はあるのだろうけれども、ウナギの保全にプラスになってくれるといいなと思う。
と言うか、より根本的には販促キャンペーンで一つの食材を大量消費するスタイルは、消費者の方から「NO」を突き付ける見識を、そろそろ持った方が良いと思う。
同じかば焼きでも、美味しいものは他にいくらでもある。
サンマだって美味しいし、たぶんナマズはウナギに似せなくともナマズとして美味しい。
アナゴも(私が好きなのはかば焼きではないが)美味い。
絶滅危惧種を私たちの世代で食い尽くす必要は、どこにもないのだ。
2018年06月11日
旧キット 1/144 MS-06R ザクU(前編)
先月、あさのまさひこ著「MSVジェネレーション」を読んだことをきっかけに、80年代前半のリアルロボットアニメ、プラモのブームについて、色々思うところがあり、当時のプラモ少年からの一つのアンサーとして一連の記事にしてきた。
分岐点1983(80年代リアルロボットブーム覚書)
●「MSVジェネレーション ぼくたちのぼくたちによるぼくたちのための『ガンプラ革命』」あさのまさひこ(太田出版)
81〜82年、劇場版ガンダム三部作公開と共に勃発した空前のガンプラブームを「第一次ブーム」とするなら、83〜84年のMSVシリーズ発売は「第二次ブーム」にあたるだろう。
アニメ作中に登場しない派生MSプラモのブームは、第一次ブームでプラモ制作の楽しさを知り、技術を身に付けた小中学生を主要な顧客に、年長のモデラーやファン層をイデオローグとして牽引された。
その頃の私は完全に子供。
素組みや小改造、筆塗り塗装がなんとかできるようになった程度の、当時よくいたプラモ少年の一人だった。
MSVシリーズは、そのくらいのレベルの子供にとってはほど良い難易度で、第一次ブームが終ってもまだプラモが作りたかった層の受け皿になった。
私たち年少ファンにとってのMSVは、なんだかんだ言ってもやっぱり「ガンダム」だった。
マンガ「プラモ狂四郎」のパーフェクトガンダムをシリーズ向けにアレンジした「フルアーマーガンダム」が一番人気だった。
後に狂四郎のパーフェクトガンダムそのものもプラモ化され、ファン主導のMSVブーム終盤のサプライズギフトになった。
一方、年長ファン層にとってのMSVは何と言ってもザクの派生デザインが人気だっただろう。
上掲の「MSVジェネレーション」でも、著者あさのまさひこが最も熱を込めて語っているのはプラモ第一作にあたる「1/144 MS-06R ザクU」だった。
読んでいるとムラムラとこのプラモをもう一度作りたい気分が盛り上がってくる名文である。
ちょうど手元には、中古屋のワゴンセールで安く入手した「箱つぶれ」が確保してある。
さっそく引っ張り出して作り始めてみた。
●1/144 MS-06R ザクU
年長ファンの間では「ゼロロクアール」と呼びならわされていたであろうこのプラモ、私たち年少ファンの間では「ザクツー」で通っていた。
アニメのザクよりカッコいいパワーアップ型だから「ザクツー」という、子供らしい理解の仕方である。
本来の設定(まあ、これも後付けなのだが)では、アニメの「旧ザク」にあたるのが「MS-05 ザクT」で、量産型ザクやシャアザクにあたるのが「MS-06 ザクU」である。
ノーマルな「ザクU」に追加装備を盛り込んであるのが「Rタイプ」なので、型番でいえば年長ファンの「ゼロロクアール」がやっぱり正しい。
こんな所にも「理論の年長ファン、無邪気に楽しむ年少ファン」という構図が表れている(笑)
まず、箱絵が素晴らしい。
MSVはどれも「箱買い」できるものが揃っており、中身の出来とのギャップも少ない良いシリーズだったが、中でもこの第一作の箱絵は出色である。
プラモの主役のザクが「後ろ向き」ででっかく描かれていることに度肝を抜かれるが、これは子供だった私でも「まあ、前から見たらほとんど普通のザクと一緒やからな」と、すぐに納得したことを覚えている。
MSVがMSVたる特徴は、ノーマルシリーズに比べてかなり大型化されたランドセル(当時は「バックパック」と呼ばれていなかった)に顕れるので、この箱絵のアングルは絶対的に正しいのだ!
このプラモは今でも再販されており、タイミングさえ良ければ定価の500円、量販店なら二割引き程度で買えるので、「今すぐ欲しい」という人以外は無理してプレミアで買ったりするようなものではない。
私が確保していた中古プラモは、箱のくたびれ具合いや、チューブ型の接着剤が入っていることから見て、おそらく当時品。
古いガンプラの中古品はプラが劣化・変形していたり、付属デカールが変色・干からびたりしている場合があるのであまりお勧めはできないが、私が確保していたブツはさほど状態は悪くなかった。
まずは素組み。
ダークグレーの一色成形。
昔のプラモなのでパーツの接着面の不整合やヒケは各所にある。
別売りの接着剤による溶着、合わせ目消し、パテ埋め等は必須で、むしろその作業工程を楽しむのが旧キットだ。
足首可動軸の接着固定がけっこう難しかった。
この箇所は「しっかり接着して2〜3日(できれば一週間ぐらい)動かさずに待つ」のが正解。
子供の頃はそれが待てなくて動かしてしまい、色々大変になってしまったことなど、思い出した(笑)
旧キットとは言え、可動にこだわる人は、ここをボールジョイントにして接地を改善するだろう。
今回私は往年の名作プラモをそのまま味わうため、完全に素組みにしてあるが、子供の頃作った時には小改造をほどこした。
GWに実家に帰省した時に、押し入れマウンテンサイクルから当時造った「ザクツー」のパーツが一部が発掘されたので、紹介してみよう。
改造個所がよく分かるのは胴体前面。
コクピットハッチが開くように、プラ板で工作してある。
今見ると工作も塗装もかなり荒っぽいが、とにかくちゃんと完成させているのは偉い!
頑張ったな、三十数年前の俺!
この「前作」を完成させたのが確か中学に上がった前後だったはずだ。
この後、私は雑誌の作例記事等で眼ばかり肥え、頭でっかちになってしまって、やたらにプラモを切り刻んで結局完成しない不治の病に罹ってしまった。
中二病のプラモにおける一症例、未完成癖である。
刻を超えてアドバイスができるなら、「とにかく無理せず一つ一つ完成させろ!」「他人の作例や、手法の流行は気にするな!」と言ってあげたい(笑)
今はもう、達観したおっさんなので、流行りなど気にせず好きに造り、好きに塗ることができる!
分岐点1983(80年代リアルロボットブーム覚書)
●「MSVジェネレーション ぼくたちのぼくたちによるぼくたちのための『ガンプラ革命』」あさのまさひこ(太田出版)
81〜82年、劇場版ガンダム三部作公開と共に勃発した空前のガンプラブームを「第一次ブーム」とするなら、83〜84年のMSVシリーズ発売は「第二次ブーム」にあたるだろう。
アニメ作中に登場しない派生MSプラモのブームは、第一次ブームでプラモ制作の楽しさを知り、技術を身に付けた小中学生を主要な顧客に、年長のモデラーやファン層をイデオローグとして牽引された。
その頃の私は完全に子供。
素組みや小改造、筆塗り塗装がなんとかできるようになった程度の、当時よくいたプラモ少年の一人だった。
MSVシリーズは、そのくらいのレベルの子供にとってはほど良い難易度で、第一次ブームが終ってもまだプラモが作りたかった層の受け皿になった。
私たち年少ファンにとってのMSVは、なんだかんだ言ってもやっぱり「ガンダム」だった。
マンガ「プラモ狂四郎」のパーフェクトガンダムをシリーズ向けにアレンジした「フルアーマーガンダム」が一番人気だった。
後に狂四郎のパーフェクトガンダムそのものもプラモ化され、ファン主導のMSVブーム終盤のサプライズギフトになった。
一方、年長ファン層にとってのMSVは何と言ってもザクの派生デザインが人気だっただろう。
上掲の「MSVジェネレーション」でも、著者あさのまさひこが最も熱を込めて語っているのはプラモ第一作にあたる「1/144 MS-06R ザクU」だった。
読んでいるとムラムラとこのプラモをもう一度作りたい気分が盛り上がってくる名文である。
ちょうど手元には、中古屋のワゴンセールで安く入手した「箱つぶれ」が確保してある。
さっそく引っ張り出して作り始めてみた。
●1/144 MS-06R ザクU
年長ファンの間では「ゼロロクアール」と呼びならわされていたであろうこのプラモ、私たち年少ファンの間では「ザクツー」で通っていた。
アニメのザクよりカッコいいパワーアップ型だから「ザクツー」という、子供らしい理解の仕方である。
本来の設定(まあ、これも後付けなのだが)では、アニメの「旧ザク」にあたるのが「MS-05 ザクT」で、量産型ザクやシャアザクにあたるのが「MS-06 ザクU」である。
ノーマルな「ザクU」に追加装備を盛り込んであるのが「Rタイプ」なので、型番でいえば年長ファンの「ゼロロクアール」がやっぱり正しい。
こんな所にも「理論の年長ファン、無邪気に楽しむ年少ファン」という構図が表れている(笑)
まず、箱絵が素晴らしい。
MSVはどれも「箱買い」できるものが揃っており、中身の出来とのギャップも少ない良いシリーズだったが、中でもこの第一作の箱絵は出色である。
プラモの主役のザクが「後ろ向き」ででっかく描かれていることに度肝を抜かれるが、これは子供だった私でも「まあ、前から見たらほとんど普通のザクと一緒やからな」と、すぐに納得したことを覚えている。
MSVがMSVたる特徴は、ノーマルシリーズに比べてかなり大型化されたランドセル(当時は「バックパック」と呼ばれていなかった)に顕れるので、この箱絵のアングルは絶対的に正しいのだ!
このプラモは今でも再販されており、タイミングさえ良ければ定価の500円、量販店なら二割引き程度で買えるので、「今すぐ欲しい」という人以外は無理してプレミアで買ったりするようなものではない。
私が確保していた中古プラモは、箱のくたびれ具合いや、チューブ型の接着剤が入っていることから見て、おそらく当時品。
古いガンプラの中古品はプラが劣化・変形していたり、付属デカールが変色・干からびたりしている場合があるのであまりお勧めはできないが、私が確保していたブツはさほど状態は悪くなかった。
まずは素組み。
ダークグレーの一色成形。
昔のプラモなのでパーツの接着面の不整合やヒケは各所にある。
別売りの接着剤による溶着、合わせ目消し、パテ埋め等は必須で、むしろその作業工程を楽しむのが旧キットだ。
足首可動軸の接着固定がけっこう難しかった。
この箇所は「しっかり接着して2〜3日(できれば一週間ぐらい)動かさずに待つ」のが正解。
子供の頃はそれが待てなくて動かしてしまい、色々大変になってしまったことなど、思い出した(笑)
旧キットとは言え、可動にこだわる人は、ここをボールジョイントにして接地を改善するだろう。
今回私は往年の名作プラモをそのまま味わうため、完全に素組みにしてあるが、子供の頃作った時には小改造をほどこした。
GWに実家に帰省した時に、押し入れマウンテンサイクルから当時造った「ザクツー」のパーツが一部が発掘されたので、紹介してみよう。
改造個所がよく分かるのは胴体前面。
コクピットハッチが開くように、プラ板で工作してある。
今見ると工作も塗装もかなり荒っぽいが、とにかくちゃんと完成させているのは偉い!
頑張ったな、三十数年前の俺!
この「前作」を完成させたのが確か中学に上がった前後だったはずだ。
この後、私は雑誌の作例記事等で眼ばかり肥え、頭でっかちになってしまって、やたらにプラモを切り刻んで結局完成しない不治の病に罹ってしまった。
中二病のプラモにおける一症例、未完成癖である。
刻を超えてアドバイスができるなら、「とにかく無理せず一つ一つ完成させろ!」「他人の作例や、手法の流行は気にするな!」と言ってあげたい(笑)
今はもう、達観したおっさんなので、流行りなど気にせず好きに造り、好きに塗ることができる!
(続く)
2018年06月12日
旧キット 1/144 MS-06R ザクU(後編)
先月、「MSVジェネレーション」(あさのまさひこ著)を読んでから、猛烈に「06R」の旧キットが作りたくなった。
●「MSVジェネレーション ぼくたちのぼくたちによるぼくたちのための『ガンプラ革命』」あさのまさひこ(太田出版)
こういう時は細かいことは気にせずに勢いで作ってしまうのが良い。
無改造筆塗りで一気に仕上げる。
基本は全くの素組みで、モノアイだけは市販パーツを貼り付けてある。
キットには水転写デカールでモノアイ用の赤丸が付属しているが、もう少し明るさ立体感、筆タッチが欲しいので、ここだけは別売りパーツ。
組み上げてからでも手足が外れてくれるので、80〜82年のノーマルガンプラよりはかなり塗りやすい。
塗装はいつも通りつや消し黒を缶スプレーで吹き、その上から黒立ち上げ風にアクリルガッシュ筆塗り。
いつもと違うのは、一部プラモ用塗料の「黒鉄色」とシルバーを使ったことぐらいだ。
子供の頃、初めて黒鉄色を塗ってみた時の驚きが蘇ってくる。
銀粒子が混ざった黒の質感がとても金属らしく見えて、「すげー! ほんまに黒で鉄や!」と感激した。
黒鉄色で塗った上から、エッジの部分をシルバーでドライブラシすると、更に金属感はアップした。
この質感がすっかり気に入った私は、1/250情景モデルのMSいくつかを全身つや消し黒鉄色+銀ドライブラシで塗り、メタルフィギュア風に仕上げたことなども思い出す。
黒鉄色の質感をガッシュの基本色だけで再現するのはさすがに無理なので久々に使ってみたが、つくづく良い色だと思う。
腕や胸のパープルの箇所は、かなり彩度を落として控えめに塗ってある。
子供の頃06Rを作った時は、ここもグレーで塗っていた。
当時のバイブル「HOW TO BUILD GUNDAM」に、黒とグレーを基本色に、銀で激しく汚してあるリックドムの作例があって、私はその色合いが大好きだったのだ。
今回は一応色指定通りパープルに塗ってあるが、グレーの諧調差にも見える程度に彩度を落とした。
ドムのカラーリングから逆算したであろう配色が、なんとも武骨でカッコいい。
確保してあったキットはたぶん三十年以上前の当時品。
水転写デカールが使用可能か気がかりだったが、木工用ボンドの水溶きで補完すると、なんとか貼り付けられた。
よく乾燥してからつや消しトップコートを軽く吹き、整えて完成。
極太のプロポーションは、これぞまさに80年代ザクプラモ!
ノーマルのシャアザク(肩ハの字切り)や、量産型ザク(本体無改造・武器セットで完全武装)を並べてみると、そのボリュームがよく分かる。
最初期ガンプラのノーマルザクの方も、土偶だなんだと言われながらも、大河原邦男の設定画にはよく似ている。
ただ、アニメ作中の安彦良和の原画の絵柄では、ザクはもっと太マッチョに描かれていて、MSVシリーズはそちらの印象に寄せてあるのだろう。
五割増くらいの横幅に加え、一番違うのが頭部形状の解釈だ。
上掲「MSVジェネレーション」によると、縦長の卵型の頭部形状やマッシブな体形は、当時世界一ザクを作るのが上手かったストリームベースの小田雅弘の造形を取り入れていたそうだ。
確かに、子供の頃はじめてこの06Rのプラモを作った時、「すげー! これ小田さんのザクやん!」と感動したことも思い出す。
あの直観は、正しかったのだ。
(子供の頃は何でも一つ一つに感動し、時間が経ってもそれは記憶に残っているものだなあ……)
ずっと後になってから発売されたFGザクと並べると、形状やスタイル解釈の流行りすたりが見えて面白い。
キットにはザクマシンガン、マシンガン用握り手、ヒートホーク、左右握り手、左右平手、中隊長マークの角、マーキング用デカールが付属している。
欲を言えば、「黒い三連星仕様」なのでバズーカも欲しかった所だが、これは別売りの武器セットから調達すればよい。
●1/144 モビルスーツ用武器セット
実は後に発売された「MS-06R-2 ジョニー・ライデン少佐機」を買えば、+100円でバズーカも含めて追加パーツがたくさん手に入り、「黒い三連星仕様」として作ることもできる。(ただし成型色は真っ赤っか!)
●1/144 MS-06R-2 ジョニー・ライデン少佐機
非常にお買い得なのだが、こちらを買うとMSVシリーズ中の最高傑作、伝説の箱絵が手に入らないのが悩ましいところだ(笑)
三十数年ぶりの「ザクツー」、めちゃめちゃ楽しかった!!!
プラモ・フィギュア作例まとめ
●「MSVジェネレーション ぼくたちのぼくたちによるぼくたちのための『ガンプラ革命』」あさのまさひこ(太田出版)
こういう時は細かいことは気にせずに勢いで作ってしまうのが良い。
無改造筆塗りで一気に仕上げる。
基本は全くの素組みで、モノアイだけは市販パーツを貼り付けてある。
キットには水転写デカールでモノアイ用の赤丸が付属しているが、もう少し明るさ立体感、筆タッチが欲しいので、ここだけは別売りパーツ。
組み上げてからでも手足が外れてくれるので、80〜82年のノーマルガンプラよりはかなり塗りやすい。
塗装はいつも通りつや消し黒を缶スプレーで吹き、その上から黒立ち上げ風にアクリルガッシュ筆塗り。
いつもと違うのは、一部プラモ用塗料の「黒鉄色」とシルバーを使ったことぐらいだ。
子供の頃、初めて黒鉄色を塗ってみた時の驚きが蘇ってくる。
銀粒子が混ざった黒の質感がとても金属らしく見えて、「すげー! ほんまに黒で鉄や!」と感激した。
黒鉄色で塗った上から、エッジの部分をシルバーでドライブラシすると、更に金属感はアップした。
この質感がすっかり気に入った私は、1/250情景モデルのMSいくつかを全身つや消し黒鉄色+銀ドライブラシで塗り、メタルフィギュア風に仕上げたことなども思い出す。
黒鉄色の質感をガッシュの基本色だけで再現するのはさすがに無理なので久々に使ってみたが、つくづく良い色だと思う。
腕や胸のパープルの箇所は、かなり彩度を落として控えめに塗ってある。
子供の頃06Rを作った時は、ここもグレーで塗っていた。
当時のバイブル「HOW TO BUILD GUNDAM」に、黒とグレーを基本色に、銀で激しく汚してあるリックドムの作例があって、私はその色合いが大好きだったのだ。
今回は一応色指定通りパープルに塗ってあるが、グレーの諧調差にも見える程度に彩度を落とした。
ドムのカラーリングから逆算したであろう配色が、なんとも武骨でカッコいい。
確保してあったキットはたぶん三十年以上前の当時品。
水転写デカールが使用可能か気がかりだったが、木工用ボンドの水溶きで補完すると、なんとか貼り付けられた。
よく乾燥してからつや消しトップコートを軽く吹き、整えて完成。
極太のプロポーションは、これぞまさに80年代ザクプラモ!
ノーマルのシャアザク(肩ハの字切り)や、量産型ザク(本体無改造・武器セットで完全武装)を並べてみると、そのボリュームがよく分かる。
最初期ガンプラのノーマルザクの方も、土偶だなんだと言われながらも、大河原邦男の設定画にはよく似ている。
ただ、アニメ作中の安彦良和の原画の絵柄では、ザクはもっと太マッチョに描かれていて、MSVシリーズはそちらの印象に寄せてあるのだろう。
五割増くらいの横幅に加え、一番違うのが頭部形状の解釈だ。
上掲「MSVジェネレーション」によると、縦長の卵型の頭部形状やマッシブな体形は、当時世界一ザクを作るのが上手かったストリームベースの小田雅弘の造形を取り入れていたそうだ。
確かに、子供の頃はじめてこの06Rのプラモを作った時、「すげー! これ小田さんのザクやん!」と感動したことも思い出す。
あの直観は、正しかったのだ。
(子供の頃は何でも一つ一つに感動し、時間が経ってもそれは記憶に残っているものだなあ……)
ずっと後になってから発売されたFGザクと並べると、形状やスタイル解釈の流行りすたりが見えて面白い。
キットにはザクマシンガン、マシンガン用握り手、ヒートホーク、左右握り手、左右平手、中隊長マークの角、マーキング用デカールが付属している。
欲を言えば、「黒い三連星仕様」なのでバズーカも欲しかった所だが、これは別売りの武器セットから調達すればよい。
●1/144 モビルスーツ用武器セット
実は後に発売された「MS-06R-2 ジョニー・ライデン少佐機」を買えば、+100円でバズーカも含めて追加パーツがたくさん手に入り、「黒い三連星仕様」として作ることもできる。(ただし成型色は真っ赤っか!)
●1/144 MS-06R-2 ジョニー・ライデン少佐機
非常にお買い得なのだが、こちらを買うとMSVシリーズ中の最高傑作、伝説の箱絵が手に入らないのが悩ましいところだ(笑)
三十数年ぶりの「ザクツー」、めちゃめちゃ楽しかった!!!
プラモ・フィギュア作例まとめ
2018年06月18日
6.18 大阪北部地震
今朝、大阪北部で震度6の地震がありました。
揺れは京阪神一円に広がり、震源付近ではかなり被害が出ています。
私が住んでいるあたりは震度4で、結構揺れましたが目立った被害はありません。
ただ、鉄道が終日運休になり、それなりに混乱はありました。
私が阪神間在住であることは当ブログでも何度か書いてました。
お見舞いの連絡をくださった方もいますので、無事を報告させていただきます。
規模の大きな余震(または本震)がまだあるかもしれんせんので、ここ数日は注意したいと思います。
この機会に、防災用品の確認もしておきます。
防災関連記事まとめ
私は阪神淡路大震災の被災者でもあります。
その記録は以下にまとめてあります。
阪神淡路大震災被災記録
4月からTwitterも始めております。
ブログ記事紹介が中心ですが、緊急時はそちらで呟きます。
烏帽子九郎Twitter
今回の地震後、Twitter上で民族差別を扇動するような流言飛語が飛び交っているようです。
地震被害を受けた上に差別デマを流された皆さんの心痛は、部外者の想像を絶することでしょう。
デマの拡散に加担しないために詳細は書きませんが、キーワードをたどると「国際政治学者」を名乗る某が、今年に入ってからのバラエティ番組で口をすべらせた、ウケ狙いの根拠なき発言がネタ元であるようです。
当の「国際政治学者」は、批判を受けても自身の妄言を撤回していません。
結果として今回のデマの拡散の一因になっていることは否定できず、非常に悪質です。
根拠薄弱な差別デマを拡散させる学者という意味では、マンガ「デビルマン」に登場する雷沼教授に等しいと言えましょう。
見た目が雷沼教授のように狂気じみておらず、「ゆるふわ雷沼」なのがまた質が悪い。
デマの拡散にうっかり加担してしまわぬよう、SNSの使用には十分気を付けたいところです。
PCデータのバックアップもしないと。
今消えたら当分立ち直れない、制作中のマンガ原稿が……
ともかく今後の数日間を慎重に過ごしたいと思います。
揺れは京阪神一円に広がり、震源付近ではかなり被害が出ています。
私が住んでいるあたりは震度4で、結構揺れましたが目立った被害はありません。
ただ、鉄道が終日運休になり、それなりに混乱はありました。
私が阪神間在住であることは当ブログでも何度か書いてました。
お見舞いの連絡をくださった方もいますので、無事を報告させていただきます。
規模の大きな余震(または本震)がまだあるかもしれんせんので、ここ数日は注意したいと思います。
この機会に、防災用品の確認もしておきます。
防災関連記事まとめ
私は阪神淡路大震災の被災者でもあります。
その記録は以下にまとめてあります。
阪神淡路大震災被災記録
4月からTwitterも始めております。
ブログ記事紹介が中心ですが、緊急時はそちらで呟きます。
烏帽子九郎Twitter
今回の地震後、Twitter上で民族差別を扇動するような流言飛語が飛び交っているようです。
地震被害を受けた上に差別デマを流された皆さんの心痛は、部外者の想像を絶することでしょう。
デマの拡散に加担しないために詳細は書きませんが、キーワードをたどると「国際政治学者」を名乗る某が、今年に入ってからのバラエティ番組で口をすべらせた、ウケ狙いの根拠なき発言がネタ元であるようです。
当の「国際政治学者」は、批判を受けても自身の妄言を撤回していません。
結果として今回のデマの拡散の一因になっていることは否定できず、非常に悪質です。
根拠薄弱な差別デマを拡散させる学者という意味では、マンガ「デビルマン」に登場する雷沼教授に等しいと言えましょう。
見た目が雷沼教授のように狂気じみておらず、「ゆるふわ雷沼」なのがまた質が悪い。
デマの拡散にうっかり加担してしまわぬよう、SNSの使用には十分気を付けたいところです。
PCデータのバックアップもしないと。
今消えたら当分立ち直れない、制作中のマンガ原稿が……
ともかく今後の数日間を慎重に過ごしたいと思います。
2018年06月23日
登川誠仁/照屋林助「ハウリング・ウルフ」
本日6月23日は沖縄慰霊の日。
沖縄では公休日で、ヤマトの方でも報道で大きく扱われるようになった。
ヤマトの人間ではあるけれども、沖縄好きで思い入れのある一人として、何か記事を書いてみたいと思った。
当ブログでは開設最初期からカテゴリを設け、ごく狭い範囲ながら私が見聞きした沖縄について語ってきた。
カテゴリ「沖縄」
90年代、バイト先で一人の師匠と出会い、沖縄のあれこれを教わった日々が、下敷きになっている。
師匠Nさんのこと
三年前にその師匠が亡くなってから、私はしばらく離れていた沖縄音楽のCDを引っぱり出して聴き返しながら、泡盛のロックをまた飲むようになった。
何枚かのCDの中で一番好きなのが、この作品。
●「ハウリング・ウルフ」登川誠仁 (オーマガトキ)
Disc1
1、軍歌たべたいなあ(露営の歌/沖縄俗謡)
2、MC:なんでも食べたいな
3、戦後の嘆き
4、MC:忘れられない歌”
5、石川かぞえ歌
6、MC:米軍キャンプのピィーウィ
7、ペストパーキンママ
8、 MC:歌を習い言葉を知らず
9、新デンサ節
10、MC:作者の心をわかってほしい
11、とぅんばるなーくんにー
(富原宮古の根/沖縄本島北部民謡)
12、MC:大和口は出来ないけれど
13、緑の沖縄
Disc2
1、MC:早口言葉はおまかせ誠小
2、なりたい節
3、MC:「辻」の歌は肝どんどん
4、誠小の六調節
5、MC:耳泥棒と工工四
6、ヒヤミカチ節
7、MC:入れ歯は歌を上達させる??
8、あさどーや ゆんた(安里屋ユンタ)
9、アッチャメー小(沖縄民謡)
一応、登川誠仁名義になっているが、実質は照屋林助との共作アルバムである。
沖縄芸能の二大巨頭が、かけあい漫才のようなMCの合間に、厳選された唄を紹介する構成。
極上のトークライブ、ディープな深夜ラジオのような趣向が素晴らし過ぎる!
私はウチナーグチがほとんどわからないのだが、繰り返し聴き返すうちにじわじわMC内容が理解できてきた。
芸の伝承と共に、それを今現在の生きた芸能として再生し続けることについて、抱腹絶倒のやりとりの中に、さらりと語られている。
どのMCも良いのだが、中でもDisc2-05「耳泥棒と工工四」が凄い。
誠小とてるりんの「巻物争奪戦」とも言える丁々発止の駆け引き、音と唄の盗み合いが語られている。
収録曲の方も、いずれ劣らぬ粒ぞろい。
もちろん沖縄民謡がメインだが、もっと広く融通無碍に引用、パロディ、リスペクトの世界が繰り広げられている。
しみじみと「ああ、芸能ってこういうことなんだなあ」と味わえる選曲だ。
あえて紹介するなら以下の曲を推したい。
●軍歌たべたいなあ(Disc1-01)
Disc1一発目がこの曲というのが凄い!
有名な「勝ってくるぞと勇ましく〜」の軍歌を改変し、徹底的に茶化し、兵隊を虫けらのように使いつぶす戦争を笑い殺す歌詞である。
怒りを込めた生真面目な唄よりも、ときに「笑い」の方が深く怒りを表現し、強くプロテストすることがあるのだ。
●ペストパーキンママ(Disc1-07)
戦後、米軍で働いていた登川誠仁が基地内で演奏されていたPistol Packin’Mamaを耳コピで憶え、三線弾き語りで歌った曲。
出鱈目にもほどがあるインチキ英語ながら、神業のような三線テクニックで米兵を逆に熱狂させたという。
由来も含めこの曲もまた、戦争を笑い殺す名演奏である。
慰霊の日に泡盛をロックで飲みながら、このアルバムを聴き返す。
ああ、またいつか沖縄の民謡酒場に行けるといいなあ。
沖縄では公休日で、ヤマトの方でも報道で大きく扱われるようになった。
ヤマトの人間ではあるけれども、沖縄好きで思い入れのある一人として、何か記事を書いてみたいと思った。
当ブログでは開設最初期からカテゴリを設け、ごく狭い範囲ながら私が見聞きした沖縄について語ってきた。
カテゴリ「沖縄」
90年代、バイト先で一人の師匠と出会い、沖縄のあれこれを教わった日々が、下敷きになっている。
師匠Nさんのこと
三年前にその師匠が亡くなってから、私はしばらく離れていた沖縄音楽のCDを引っぱり出して聴き返しながら、泡盛のロックをまた飲むようになった。
何枚かのCDの中で一番好きなのが、この作品。
●「ハウリング・ウルフ」登川誠仁 (オーマガトキ)
Disc1
1、軍歌たべたいなあ(露営の歌/沖縄俗謡)
2、MC:なんでも食べたいな
3、戦後の嘆き
4、MC:忘れられない歌”
5、石川かぞえ歌
6、MC:米軍キャンプのピィーウィ
7、ペストパーキンママ
8、 MC:歌を習い言葉を知らず
9、新デンサ節
10、MC:作者の心をわかってほしい
11、とぅんばるなーくんにー
(富原宮古の根/沖縄本島北部民謡)
12、MC:大和口は出来ないけれど
13、緑の沖縄
Disc2
1、MC:早口言葉はおまかせ誠小
2、なりたい節
3、MC:「辻」の歌は肝どんどん
4、誠小の六調節
5、MC:耳泥棒と工工四
6、ヒヤミカチ節
7、MC:入れ歯は歌を上達させる??
8、あさどーや ゆんた(安里屋ユンタ)
9、アッチャメー小(沖縄民謡)
一応、登川誠仁名義になっているが、実質は照屋林助との共作アルバムである。
沖縄芸能の二大巨頭が、かけあい漫才のようなMCの合間に、厳選された唄を紹介する構成。
極上のトークライブ、ディープな深夜ラジオのような趣向が素晴らし過ぎる!
私はウチナーグチがほとんどわからないのだが、繰り返し聴き返すうちにじわじわMC内容が理解できてきた。
芸の伝承と共に、それを今現在の生きた芸能として再生し続けることについて、抱腹絶倒のやりとりの中に、さらりと語られている。
どのMCも良いのだが、中でもDisc2-05「耳泥棒と工工四」が凄い。
誠小とてるりんの「巻物争奪戦」とも言える丁々発止の駆け引き、音と唄の盗み合いが語られている。
収録曲の方も、いずれ劣らぬ粒ぞろい。
もちろん沖縄民謡がメインだが、もっと広く融通無碍に引用、パロディ、リスペクトの世界が繰り広げられている。
しみじみと「ああ、芸能ってこういうことなんだなあ」と味わえる選曲だ。
あえて紹介するなら以下の曲を推したい。
●軍歌たべたいなあ(Disc1-01)
Disc1一発目がこの曲というのが凄い!
有名な「勝ってくるぞと勇ましく〜」の軍歌を改変し、徹底的に茶化し、兵隊を虫けらのように使いつぶす戦争を笑い殺す歌詞である。
怒りを込めた生真面目な唄よりも、ときに「笑い」の方が深く怒りを表現し、強くプロテストすることがあるのだ。
●ペストパーキンママ(Disc1-07)
戦後、米軍で働いていた登川誠仁が基地内で演奏されていたPistol Packin’Mamaを耳コピで憶え、三線弾き語りで歌った曲。
出鱈目にもほどがあるインチキ英語ながら、神業のような三線テクニックで米兵を逆に熱狂させたという。
由来も含めこの曲もまた、戦争を笑い殺す名演奏である。
慰霊の日に泡盛をロックで飲みながら、このアルバムを聴き返す。
ああ、またいつか沖縄の民謡酒場に行けるといいなあ。
2018年06月24日
ガンプラ旧キット制作参考資料
80年代ガンプラ旧キットを制作する時の参考資料として、やはり当時の作例やイラスト、設定資料の類の載っている書籍が欲しくなる。
手持ちの資料の中から、いくつか今でも比較的入手し易いものを紹介してみよう。
何はともあれまず再見したいのは、ブーム当時描かれた御大・大河原邦男のイラストだ。
あの頃活躍していたモデラーの皆さんから、広大な裾野たるプラモ少年まで、みんな参考にしていた「根本資料」と呼べるのが、大河原イラストではないだろうか。
ブーム初期、ガンプラを塗る時の参考になるのは、まずはプラモの箱絵や組立解説書の色指定だったが、それだけではオモチャ然とした旧来のロボットにしかならなかった。
当時「リアル」を志向するガンダムイラストを描けるのは、メカニックデザイナーである大河原邦男しかいなかったのだ。
ポスターカラーで筆タッチを活かした骨太な絵柄。
激しいウエザリング。
精密なマーキング。
ミリタリー感覚溢れるリアルタイプカラーなどなど。
多くのガンプラファンに「こんな風にプラモを作りたい!」と思わせる、素晴らしいイラストだったと思う。
大河原御大の画集はいくつも出ているが、ガンダム関連でもう一度見たいイラストが、ほとんど収録されているのが、以下の一冊。
●「大河原邦男画集―Gundam art works」(ムービック)
ファーストガンダムだけでなく、ゼータからF91あたりまでのイラストや、近年制作された新作も多数収録されている。
思い出補正もあろうけれども、やはり圧倒的に昔のイラストが良い。
あの「ラストシューティング」を含む劇場版のポスターや、初期MSVの設定画、ソノラマ文庫小説版の表紙絵なども、もちろん収録。
あと一枚、確かボンボンに載っていた「歴戦を経たガンダムマークU」のイラストが収録されていれば、私の中では100点満点だったのだが、おしい!
そしてブーム初期、大河原イラストにインスパイアされた作例が次々に発表されたのが「月刊ホビージャパン」であり、その伝説の総集編が、以下のものだった。
●「HOW TO BUILD GUNDAM1、2」
現在は復刻版や電子書籍版も刊行されており、入手は極めて容易。
おっさんになった今読み返すと、子供の頃仰ぎ見るだけだった記事中の改造が、「けっこうできる」ようになっているのがわかってちょっと感動する。
82年、ブームがそろそろ後半に入ると、ガンプラ記事の「熱」は、模型専門誌から児童マンガ月刊誌「コミックボンボン」へと移行した。
当時活躍していたモデラー集団ストリームベースの面々の作例、製品情報、そして史上初のガンプラマンガである「プラモ狂四郎」連載で、ボンボンは一気にガンプラ雑誌と化した。
相互の記事が互いにリンクし、うねるように加速していく当時の熱狂は、リアルタイムで雑誌を読んでいないと中々理解しがたいのではないかと思う。
強いて挙げればマンガ「プラモ狂四郎」のストーリー展開が、あの頃の雰囲気を一番伝えているかもしれない。
序盤の小改造からパーフェクトガンダム完成に至るまでの盛り上がりは、今見ても色あせない。
●「プラモ狂四郎」やまと虹一(講談社)
ボンボン掲載の作例や設定資料、関連記事は、文庫サイズ三冊にまとめられており、復刻もされているので入手は比較的容易だ。
●「<復刻版>機動戦士ガンダムモビルスーツバリエーション1〜3」
ボンボンと共にガンプラファンによく読まれていたのが、プラモ屋店頭で販売されていたバンダイ刊行の「模型情報」で、小冊子ながら毎月充実の内容だった。
MSVについては別冊ハンドブックとして刊行され、こちらも近年復刻されている。
●「模型情報・別冊MSバリエーション ハンドブック 復刻版」
もう一冊挙げるなら、ブーム後半のボンボン作例を集成した以下の一冊だ。
●「コミックボンボン別冊 スーパーモデリング」
小田雅弘によるジョニー・ライデンの06R-2ザクが表紙を飾る。
ジョニー・ライデン機にドムのバズーカを持たせたのはおそらくこの作例が最初だったはずで、そのあまりのカッコ良さに定番設定化していった。
80年代を風靡した小田雅弘ザク作例の到達点である。
こちらは復刻されていないので入手困難だが、一部作例写真は小サイズながら、以下の一冊にも収録されている。
●「ガンプラ・ジェネレーション」五十嵐浩司・編(講談社)
ガンプラに十周年を記念して刊行されたもの。
ファーストガンダムからMSVを中心に、90年代末までのガンプラの歴史を回顧している。
今となっては幻の「MSX」シリーズのカラー設定も収録。
制作中のBGMには、以下の音源がおススメ。
●ベスト・オブ・ガンダム
ファーストガンダムのTV版、劇場版の主題歌、挿入歌がとりあえず一通り全部収録。
曲間に劇中セリフが入っているのも良いが、一部別の声優さんが無理やりつないでいるような?
●機動戦士ガンダム ― オリジナル・サウンドトラック
ファーストガンダム劇中音楽で聴きたいものは、とりあえず一通り収録。
80年代前半のガンプラブーム全般の「通史」としては、これまでにも度々紹介してきた以下の一冊が挙げられる。
●「MSVジェネレーション ぼくたちのぼくたちによるぼくたちのための『ガンプラ革命』」あさのまさひこ(太田出版)
当ブログでガンプラ旧キット作例は以下に。
プラモ・フィギュア作例まとめ
これまでの作例の中で、大河原邦男タッチで割と気に入っているのは、ガンダムとシャア専用ズゴック。
まだまだ粗いので、精進します!
手持ちの資料の中から、いくつか今でも比較的入手し易いものを紹介してみよう。
何はともあれまず再見したいのは、ブーム当時描かれた御大・大河原邦男のイラストだ。
あの頃活躍していたモデラーの皆さんから、広大な裾野たるプラモ少年まで、みんな参考にしていた「根本資料」と呼べるのが、大河原イラストではないだろうか。
ブーム初期、ガンプラを塗る時の参考になるのは、まずはプラモの箱絵や組立解説書の色指定だったが、それだけではオモチャ然とした旧来のロボットにしかならなかった。
当時「リアル」を志向するガンダムイラストを描けるのは、メカニックデザイナーである大河原邦男しかいなかったのだ。
ポスターカラーで筆タッチを活かした骨太な絵柄。
激しいウエザリング。
精密なマーキング。
ミリタリー感覚溢れるリアルタイプカラーなどなど。
多くのガンプラファンに「こんな風にプラモを作りたい!」と思わせる、素晴らしいイラストだったと思う。
大河原御大の画集はいくつも出ているが、ガンダム関連でもう一度見たいイラストが、ほとんど収録されているのが、以下の一冊。
●「大河原邦男画集―Gundam art works」(ムービック)
ファーストガンダムだけでなく、ゼータからF91あたりまでのイラストや、近年制作された新作も多数収録されている。
思い出補正もあろうけれども、やはり圧倒的に昔のイラストが良い。
あの「ラストシューティング」を含む劇場版のポスターや、初期MSVの設定画、ソノラマ文庫小説版の表紙絵なども、もちろん収録。
あと一枚、確かボンボンに載っていた「歴戦を経たガンダムマークU」のイラストが収録されていれば、私の中では100点満点だったのだが、おしい!
そしてブーム初期、大河原イラストにインスパイアされた作例が次々に発表されたのが「月刊ホビージャパン」であり、その伝説の総集編が、以下のものだった。
●「HOW TO BUILD GUNDAM1、2」
現在は復刻版や電子書籍版も刊行されており、入手は極めて容易。
おっさんになった今読み返すと、子供の頃仰ぎ見るだけだった記事中の改造が、「けっこうできる」ようになっているのがわかってちょっと感動する。
82年、ブームがそろそろ後半に入ると、ガンプラ記事の「熱」は、模型専門誌から児童マンガ月刊誌「コミックボンボン」へと移行した。
当時活躍していたモデラー集団ストリームベースの面々の作例、製品情報、そして史上初のガンプラマンガである「プラモ狂四郎」連載で、ボンボンは一気にガンプラ雑誌と化した。
相互の記事が互いにリンクし、うねるように加速していく当時の熱狂は、リアルタイムで雑誌を読んでいないと中々理解しがたいのではないかと思う。
強いて挙げればマンガ「プラモ狂四郎」のストーリー展開が、あの頃の雰囲気を一番伝えているかもしれない。
序盤の小改造からパーフェクトガンダム完成に至るまでの盛り上がりは、今見ても色あせない。
●「プラモ狂四郎」やまと虹一(講談社)
ボンボン掲載の作例や設定資料、関連記事は、文庫サイズ三冊にまとめられており、復刻もされているので入手は比較的容易だ。
●「<復刻版>機動戦士ガンダムモビルスーツバリエーション1〜3」
ボンボンと共にガンプラファンによく読まれていたのが、プラモ屋店頭で販売されていたバンダイ刊行の「模型情報」で、小冊子ながら毎月充実の内容だった。
MSVについては別冊ハンドブックとして刊行され、こちらも近年復刻されている。
●「模型情報・別冊MSバリエーション ハンドブック 復刻版」
もう一冊挙げるなら、ブーム後半のボンボン作例を集成した以下の一冊だ。
●「コミックボンボン別冊 スーパーモデリング」
小田雅弘によるジョニー・ライデンの06R-2ザクが表紙を飾る。
ジョニー・ライデン機にドムのバズーカを持たせたのはおそらくこの作例が最初だったはずで、そのあまりのカッコ良さに定番設定化していった。
80年代を風靡した小田雅弘ザク作例の到達点である。
こちらは復刻されていないので入手困難だが、一部作例写真は小サイズながら、以下の一冊にも収録されている。
●「ガンプラ・ジェネレーション」五十嵐浩司・編(講談社)
ガンプラに十周年を記念して刊行されたもの。
ファーストガンダムからMSVを中心に、90年代末までのガンプラの歴史を回顧している。
今となっては幻の「MSX」シリーズのカラー設定も収録。
制作中のBGMには、以下の音源がおススメ。
●ベスト・オブ・ガンダム
ファーストガンダムのTV版、劇場版の主題歌、挿入歌がとりあえず一通り全部収録。
曲間に劇中セリフが入っているのも良いが、一部別の声優さんが無理やりつないでいるような?
●機動戦士ガンダム ― オリジナル・サウンドトラック
ファーストガンダム劇中音楽で聴きたいものは、とりあえず一通り収録。
80年代前半のガンプラブーム全般の「通史」としては、これまでにも度々紹介してきた以下の一冊が挙げられる。
●「MSVジェネレーション ぼくたちのぼくたちによるぼくたちのための『ガンプラ革命』」あさのまさひこ(太田出版)
当ブログでガンプラ旧キット作例は以下に。
プラモ・フィギュア作例まとめ
これまでの作例の中で、大河原邦男タッチで割と気に入っているのは、ガンダムとシャア専用ズゴック。
まだまだ粗いので、精進します!