子供の頃から「本好き」を自認してきて、実際分量としてはかなり読んでいる方だと思う。
しかし「一人の作者や一つのテーマにハマる」傾向はずっとあって、読書は「狭く、深く」偏りがちだ。
分量・冊数読んでいる割には、意外に有名どころがぽっかり抜け落ちていたりもする。
恥ずかしながら、今回取り上げる「星の王子さま」も、そんな中の一冊だ。
ずっと興味はあり、何度か手に取って最初の数ページ(あのウワバミのくだり)だけは面白く読んでいたのだが、なぜかその後が続かなかった。
心のタイミングがうまく合わず、「縁」がなかったということだろう。
それでもいつか読もうと思いながら、未読のままに、すっかりおっさんになってしまっていた。
この度、改めて読む気になったのは、しばらく前の、某プラントハンター氏の「暴挙」がきっかけだった。
あまり愉快でない話題について詳述する意欲は湧かないので、心覚えにキーワードのみ記しておく。
「プラントハンター 西畠清順 星の王子さま 改変 バオバブ」
改変騒動に関する記事を眺めながら、何となく「今なら読めそうだ」と感じて図書館に直行。
最もオーソドックスな岩波ハードカバー版を借りてきて、一気読みした。
結論から言うと、生きてる間に読めて本当に良かった!
そういう意味では某氏に反面の感謝である。
様々なバージョンが出版されているが、原著者の挿絵はやはり必要不可欠だと感じる。
今、岩波の内藤濯(ないとう あろう)訳を求めるなら、以下の中から選ぶことになりそうだ。
●「星の王子さま―オリジナル版」
●「愛蔵版 星の王子さま」
●「星の王子さま」(岩波少年文庫)
カテゴリとしてはもちろん「児童文学」になるけれども、全てのすぐれた作品がそうであるように、「大人にこそ読まれるべき」「今、この私のために書かれた」と感じられる作品だった。
私なりの分類で言えば、これは「心の中の友だち」の物語だった。
心の中の友だち、心の中の恋人
そして、基本的には「友だち」の構図を持ちながら、大人が読む場合はさらに重層的な受け止め方になってくるはずだ。
少年時代の自分
少年時代の友だち
今交流のある少年たち、あるいは自分の子どもたち
様々な位相の「子ども」との対話が、読み進めながら、心の中で繰り広げられるはずだ。
人生の中で、繰り返し、何度も、味わうための一冊。
私の「縁」は遅くなってしまったけれども、別に早い遅いは関係ない。
今借りている本は図書館に返却するとして、やはり手元に一冊、作者挿絵の入った本が欲しいのである。