blogtitle001.jpg

2020年04月14日

70年代スーパーロボット・ビッグバン

 アトム以降のロボットアニメを新次元に進化させた例としては、なんといっても永井豪の「マジンガーZ」(1972年〜)が挙げられる。
 70年代初頭は、時代的にはアニメもマンガも「スポ根モノ」の全盛期で、手塚から始まるSF路線、ロボット路線の人気が低迷していた時期である。
 そんな時期に再び子供の興味を巨大ロボットに引き戻したのが「マジンガーZ」だったのだ。
 手塚から石ノ森章太郎、永井豪へと続くラインは、ある意味で日本のSFマンガの直系とも言えるだろう。

 アーティストの作品評価において、「広く一般に届いた人気作」と、「ファンの間で愛される最高傑作」の間に、ズレが生じるケースが多々ある。
 永井豪は多くの名作を生み出してきたマンガ家で、後続のサブカルチャーに多大な影響を及ぼしたが、「広く一般に届いた」という意味での代表作は、やはり「マジンガーZ」になるだろう。
(そして「ファンの間で愛される最高傑作」は、間違いなく「デビルマン」になるが、この作品については次回詳述)

 先行するロボットモノの要素を継承しながら、「マジンガーZ」から独自に創出された要素も数多い。
 何よりもまず、実際に人が乗り込む「搭乗型巨大ロボット」であることが特筆される。
 これにより、鉄人28号のリモコン操作型より主人公との一体感が増し、バトル描写に臨場感が生まれたのだ。
 人体を十倍に拡大した18m前後の設定、コクピットを兼ねた小型戦闘機との合体、飛行ユニットとの合体も、既に「マジンガーZ」から始まっている。
 他にも、
・下手すると悪役に見えてしまいそうな悪魔的なデザイン。
・新素材や新エネルギーによる高性能化の理屈付け。
・続編である「グレートマジンガー」まで含めると、主役機の交代劇。
・同じく永井豪率いるダイナミックプロ原作の「ゲッターロボ」まで含めると、複数のチームマシンによる変形合体。
 などなど、後のロボットアニメにも継承される「ウケる」要素が、これでもかというほど「マジンガーZ」をはじめとする一連のダイナミックプロ原案の作品で創出された。
 他ならぬ「スーパーロボット」という呼称自体が「Z」の主題歌の歌詞の一節で、勇ましく戦闘的なアニメソングの系譜も同じ主題歌から始まったのだ。

 そしてこれらのダイナミックプロによるスーパーロボット作品は、TVアニメ先行の企画であった。
 マンガ版は必ずしも「原作」ではなく、アニメ版と並行した別作品という体裁になっている。
 こうした構図はほぼ同時期に制作された石ノ森章太郎原作の特撮番組「仮面ライダー」等とも共通している。
(TVアニメと並行したマンガ版が、マンガ家のSF的「暴走」により、制約の多いアニメとはかけ離れた展開を見せる現象については前回記事参照)

 マジンガーZはまた、玩具にも革命をもたらした。
 ダイカスト素材を使用した頑丈で重量感のある「超合金」と、軽量で比較的大型のソフトビニール製玩具は、以後のスーパーロボットアニメの定番アイテムになり、おもちゃメーカーが作品を提供するビジネスモデルが確立した。
 30分枠の一話完結方式で主役ロボットが活躍するフォーマットは、「ロボットプロレス」「玩具の30分CM」などと言われながらも多くの優れた作品を生み、私はまさにその全盛期に子供時代を過ごしたのだ。


 マジンガ―シリーズに関して言えば、同時進行で執筆されたマンガ版よりも、ヨーロッパなど、海外の放映でも絶大な人気を博したTVアニメ版こそが「正伝」だったのではないかと思う。
 永井豪自身によるマンガ版は、厳密には「原作」ではなく、アニメ版と並行したアナザーストーリーであった。
 シンプルな勧善懲悪でスーパーロボットの活躍を描いた良作ではあるものの、必ずしも「全力投球」の作品ではなかった。
 同時期に最大の問題作である「デビルマン」を執筆中で、そちらに主要なエネルギーを傾注しながらの連載だったのだ。

【永井豪マンガ版】

●「マジンガーZ」

 マジンガーシリーズのコミカライズでは、むしろ同じダイナミックプロ内で制作された桜田吾作版が、絵柄の好みは分かれるけれども、骨太なストーリー展開が光る。

【桜田吾作版マジンガーシリーズ】

●「マジンガーZ」
●「グレートマジンガー」
●「UFOロボ グレンダイザー」

 永井豪が原案を担当し、TVアニメにもなった「ゲッターロボ」「ゲッターロボG」も、同じダイナミックプロの石川賢がマンガ版を担当した。
 こちらも手加減抜きのハードな描写で、70年代スーパーロボットマンガの最高峰と言ってよいだろう。


●「ゲッターロボ」
●「ゲッターロボG」

 以後も70年代を通じて、永井豪とダイナミックプロは多くのスーパーロボット作品を生み出し、他の作り手も巻き込んで、サブカルチャーの一大市場を形成していった。
 70年代末の「機動戦士ガンダム」によって、アニメの世界にはもう一段階進化したリアルロボット路線が創出され、やや年長の新たなファン層を開拓した。
 それでも幼年層にも鑑賞しやすいシンプルなスーパーロボット路線への需要は、時代を超えて残った。
 単独テーマのTV番組でなくとも、たとえば特撮ヒーロー番組内の一要素として、スーパーロボットは採用され続けたのだ。

sh70-07-02.jpg
posted by 九郎 at 23:27| Comment(0) | 青春ハルマゲドン70s | 更新情報をチェックする