先日近場でフェスがあり、久々に川口真由美さんのライブを観た。
相変わらずのパワーで、ネジを限界まで巻いてもらった気がした。
この歌い手についてはこれまでにも何度か記事にしてきた。
反骨のカーリー 川口真由美さんのこと
反骨のカーリー、再び(川口真由美 2ndアルバムのこと)
川口真由美「〜沖縄・平和を歌うV このクニに生きて」
そう言えば2022年末に発売された四枚目のアルバムについてまだ書いていなかったのを思い出した。
ライブの興奮の冷めないうちに書き留めておきたい。
●川口真由美4th『Espina』
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第一印象は「分厚い」。
音も声も歌詞も分厚く、ブルース好きに刺さる。
自戒しなければならないのだが、日常目にするSNSには薄っぺらな言葉や中身のない形だけのバトルが蔓延していて、日々そうした空疎な言葉を浴びる内に、自分の言葉や思考までなまくらになってしまう。
意識的に聴くべきなのは、暴虐の現場を踏み、歌い続けて来た歌い手の本物の声である。
本物の声を浴び、「言葉」というもの本来の力と重さを取り戻さなければならないのだ。
酷い現実に対する歌に込められた思いは深いまま、今回のアルバムでは「音を楽しむ」要素はむしろ強まっていると感じる。
歌が良いのはもちろんのこと、演奏陣も素晴らしく良い。
第一印象で「分厚い」と感じたのは、演奏陣と噛み合ったグルーヴのせいだろうか?
ふと「地獄は一定すみかぞかし」という親鸞の言葉も浮かんでくる。
ソロのギターや鍵盤ハーモニカも、歌い手とともに地獄で遊び、泣いている。
川口真由美のアルバムと言えば、歌い継がれてきたプロテストソングのカバーも聴きどころの一つ。
今回の四枚目にも収録されていて、「死んだ男の残したものは」は、限りなく暗く優しく響いてきた。
2016年頃に反原発デモでご本人の歌を聴き、たまたま少しお話しできる機会があって以来、勝手ながら路上から世を憂う仲間意識みたいなものを感じ、アルバムを追ってきた。
そして世界は、日本は、コロナ禍が重なり、状況は悪化し続け、戦争の荒れ果てた空気に支配されるようになってしまった。
その反作用のように、川口真由美の歌は力を増しているのである。