日本を含めたアジア史を学ぶ時、避けて通れないのが「仏教」というテーマだ。
別に専門家でもなんでもないのだが、このような「神仏与太話ブログ」をやっているせいもあり、たまに「仏教は何から読んだらいいですか?」と聞かれる。
そんな時、素人代表として紹介するのがこの一冊。
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●『仏教 第2版』渡辺照宏(岩波新書)
岩波新書定番の一つ。
90年代に仏教を自分なりに勉強し始めた最初期、「ちょっと堅そうだが、岩波新書の青版なら間違いなかろう」と手にとった。
この一冊に目を通していたおかげで、その後の読書の筋を大きく外さず進めることができた覚えがある。
新書なので厚すぎず薄すぎず、古代インドの仏教を中心に、時代背景やその後の展開を簡潔な筆致で解説してある。
読み進めると、日本で習俗や常識として身に着けている仏教への認識が、出発点である古代インドの仏陀の教えと対照され、「そういうことだったのか!」と目を開かされることが何度もあるだろう。
専門書への橋渡しとしての価値も大きい。
仏教の入門書とかムック本は毎月のように刊行されていて、それはそれで読みやすいかもしれないが、書くべき人が全力投球で書き上げた入門書はやはり良い。
読み込むほどに発見がある入門編にして奥の院みたいな一冊なのだ。
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●『仏教入門』松尾剛次(岩波ジュニア新書)
上掲『仏教 第二版』はとてもいい本だが、今の中高生あたりの世代だと、そもそも自分の中に「習俗や常識としての仏教」が存在しない場合が多いだろう。
ゼロからの読み始めの場合は、こちらジュニア新書の『仏教入門』を先に読んでおいた方が良いかもしれない。
インド仏教以降、中国や日本その他の仏教の展開までカバーしてあるので、古代インド中心の『仏教 第二版』を補完する内容でもある。
(写真は昔のもの。今はカバーが変わっているはず)
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●『理趣経』松長有慶(中公文庫)
何かを学ぼうとして本を探すということは、信頼できる著者を探すということと重なる。
なんでもそうだが、「密教」というテーマはとくに著者選びに注意を要する面があるように思う。
著者を身もふたもなく一言で紹介するなら、「高野山で一番偉いお坊さん」ということになるだろう。(2023年4月没)
名著中の名著だと思う。
密教について、曼荼羅について、まず最初に何を読むべきかと問われれば、一秒も迷わずこの本を推す。
理趣経の解説を軸としながら、日本ではなじみが薄いチベット密教まで視野にいれた思想を、中高生でも読めそうな極めて平易な語り口で紹介してある。
1992年刊だが、もしこの本が十年早く刊行されていれば、同時代にオカルト的な密教理解で道を誤る若者を大幅に減らせたのではないかとさえ思う。
こちらも、「書くべき人が書いた入門編にして奥の院」である。