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●『日本アニメ史』津堅信之(中公新書)
アニメはその発祥から映画と一体のものであった。
いわゆる「パラパラマンガ」の仕組みを基本とし、幻灯機のような映写技術、写真技術など、バラバラに発祥した技術が19世紀末あたりに組み合わされて成立したのが「映画」で、コマ撮りする画像が写真であれば実写、手描きの絵であればアニメーションになる。
20世紀に入ってから音声技術とも合体し、カラー化した近現代の技術なので、初期段階から各国間が密接に影響しあって進化してきた。
映像表現は大衆に情報を伝えるには極めて有効だったが、製作には多額の予算と人手が必要であり、20世紀中盤の勃興期が第二次世界大戦と重なったため、各国で国費を使った戦意高揚プロパガンダ映画が製作された。
完全に文化の戦争利用、大衆動員だったが、潤沢な資金から制作環境構築と人材の育成を促し、手塚治虫をはじめとする戦後の表現者も、そうした作品からアニメを志したという。
本書は独自の時代区分で主に戦後アニメの変遷を分析している。
第3章と4章では、50年代から60年代の流れを紹介してあり、「東洋のディズニー」たらんと劇場公開のフルアニメを主とする東映動画と、無料のTV放映向けのリミテッドアニメを主とする虫プロの方向性の対比は二本柱となって、その後の日本アニメにも受け継がれていく。
第5章:『ルパン三世』、『マジンガーZ』、『宇宙戦艦ヤマト』、『アルプスの少女ハイジ』、『タイムボカン』シリーズ。
第6章:『機動戦士ガンダム』、『銀河鉄道999』、『未来少年コナン』と『ルパン三世カリオストロの城』、『うる星やつら』、『超時空要塞マクロス』。
このあたりは私もリアルタイムで視聴してきた70年代半ば〜80年代半ば、第二次アニメブームの最盛期についての紹介。
第7章:84年『風の谷のナウシカ』〜90年代前半の動静。
空前のアニメブームのピークが去る中、私も一旦アニメから離れていた。
第8章:95年『新世紀エヴァンゲリオン』〜00年代前半以降は、いくつかの代表的な作品しか知らなかったので、流れを理解する参考になった。
そして第9〜10章:00年代半ば〜10年代、WEB配信と個人制作の環境が整い、グローバル化も本格的になり、新たな才能が輩出される。
終章:2020年代、コロナ禍以降から現在に至る解説。
1クール13話ごとの製作委員会方式については、認識を新たにした。
戦後のアニメや映画は大衆エンターテインメント、サブカルチャーとして発達したので、世相が内容に濃厚に反映され、また時代ごとの社会の在り方で制作体制も変遷した。
アニメの歴史を追うことは、近現代史をなぞることでもある。
よくまとまって頭の整理に役立つ一冊だった。