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2008年10月26日

図像覚書7 苦行

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【釈迦苦行図】
 子供の頃、奇怪な図版を目にして言葉を失ったことがある。
 いつ頃のことなのか記憶が定かではないが、おそらく仏像彫刻が好きだった祖父の本棚から手に取り、開いた本に載っていた図版だろう。
 骸骨のように痩せこけた人物が座禅を組むように座り、目を落ち窪ませ、やや身体を傾けながら瞑想している像の写真図版。
 他のどの仏像とも違う異様な像だったが、頭部の後に後光を表す丸い円盤が付けられているので、座っている人物が「仏様」であることは分かった。
 後にそれが有名な「釈迦苦行像」であることを知った。
 インドの小国の王子であったお釈迦様は、出家し、菩提樹の下で悟りを開く前に、苦行を積んだ時期があったという。誰よりも激しい行を積んだお釈迦様だったが、結局苦行では悟れず、禅定により悟りを開くことになる。
 あらゆる欲望が満たされる王子の生活と、あらゆる欲望を否定し尽くそうとする苦行生活の両極端を体験したお釈迦様は、その二つの道は「欲望にとらわれている」と言う意味では同じことであると考えたという。
 釈迦苦行像は、見るものに「これが本当におまえの求めるものか?」と強く問いかけている特殊な仏像だと思う。


 ※上掲図は「釈迦苦行像」を元に、独自に描いたもの。
posted by 九郎 at 22:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 神仏絵図覚書 | 更新情報をチェックする
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