2009年02月09日

中春こまわり君、再会

 70年代を代表するギャグ漫画「がきデカ」の続編、「中春こまわり君」について、これまで二度記事にしてきた。

中春こまわり君
中春こまわり君、再び

 数年間、断続的に連載されていたこの作品が一冊にまとまって刊行されていたので紹介しておこう。往年の「がきデカ」読者感涙必読の一冊だ。


●「中春こまわり君」山上たつひこ(ビッグコミックススペシャル)

 約二年前、なんとなく手に取った雑誌であのこまわり君が復活していることを知った。それから注意を払ってはいたのだが、不定期に短期連載が始まっては終了するので全ては追いきれなかった。 今回、単行本で未読分を補完でき、凄く濃密な良い時間を過ごせた気がする。

 復活したこまわり君は、可愛い奥さんと真面目そうな一人息子という家庭を持ち、それなりの規模と思しき会社で、同僚の西城君とともに営業職に就いている。この「意外性」有る設定だけでも作品の成功は担保されていたと思うのだが、通読してみてもう一つ「意外な設定」に気付いた。
 旧「がきデカ」は、長期連載のギャグ漫画にはままあることだが、一種の「閉じられた時間」に設定されていた。作品内の風景は季節のうつろいとともに描かれるのだが、連載期間中、基本的に登場人物が年をとることは無かった。
 こまわり君という聖なる狂気を帯びた異人が、周囲の一般人の中に紛れ込んだことで生じる「お祭りさわぎ」を永続させるための、「季節は巡れど時間は過ぎない」特別な時空の中で作品は紡がれていた。
 だから旧作は「時間経過による終了」は免れていたのだが、こまわり君の放射する狂気が他の(正気な)キャラクターにも徐々に伝染していくことにより、狂気と正気の落差によって生じる「お祭りさわぎ」の駆動エネルギーが希薄になることで終了したのだと思う。

 今回の「中春こまわり君」は、38歳〜42歳のこまわり君が登場する。設定の上で中年になったとされているだけでなく、作中の時間が「この世の時間」と同様に流れていることになる。実際、38歳、40歳、42歳のこまわり君は、それぞれに少しずつ性格が違っている。
 新作のこまわり君は、一応「正気」の人々の中に潜み、時に噴出して日常生活を破綻させようとする「静かな狂気」を、再び日常の中に軟着陸させ、「鎮魂」して回る役柄になっている。
 その様は、まるで改心して仏教の守護神となった夜叉や鬼神、天部の神々のようにも見えてくる。往年の異形の力はやや減じているものの、パンツの中の刃はまだまだ健在だ。

 一発ギャグだけではなく、巧妙な筋立てと会話の「間」で、何度も再読のできる、大人の作品に仕上がっている。
 ぜひ、今後のこまわり君も見てみたくなる。
 数年に一度、昔の友人と飲むぐらいの頻度でいいから。
posted by 九郎 at 22:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 神仏絵図覚書 | 更新情報をチェックする
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