石造りの路地をぶらついていると、壁の所々に不思議な文字が刻んである。

「なんだこれ?」と注意してみると、いくらでも見つかる。普通は文字を刻んだ石板だが、プラスチック製など、他の素材のものもある。
これは石敢當(イシガントゥ)という魔除けの御守りだ。T字路やY字路の突端など、道筋や視線が直接ぶつかる所には、たいてい設置してある。

なんでも「魔物は直進する性質がある」からだそうで、気の流れに沿って家屋に直進してくる目に見えない「魔」の力を、無力化する役割があるらしい。おびただしい数の石敢當を観察していると、この御守りがいかに根付いているかがよくわかる。
とはいえ、沖縄の人はみんなこうした考えを持っているのかというと、もちろんそんなことは無い。迷信嫌いの沖縄人も多いし、古くからの習慣として続けているだけの人が大半だろう。
しかし私の考えでは、石敢當は何の根拠もない単なる迷信とは言えないと思う。
敢えて合理的に解釈してみることも出来そうだ。
石敢當の設置してある場所を観察してみると、いかにも接触事故などが起りそうな所が多い。そうした場所に御守りを付け、常に注意を払う習慣が人々に根付いているならば、未然に防いで来た事故もたくさんあったのではないだろうか。
また、交差点の突端やY字路の先端部分に住居がある場合、住人は常に視線にさらされ、上記のような事故の危険性もプラスして、余分なストレスを日常生活に課されることになる。
通行人の視線を「石敢當」に集約し、護符としての機能もあるとなれば、住人のストレスはかなり軽減され得るのではないだろうか。
以上のような推論を、現地の皆さんと話し合ったこともある。
私は各土地に根ざした習慣にはそれなりの敬意を払いたい。でも通りがかったY字路のビルの一階に、写真のような名前の居酒屋を見つけると、ネタなのか真面目にやってるのか微妙な感じで、ちょっと対応に困ったりする(笑)

ガイジンとしては驚くべきことに、石敢當はキャラクターグッズやお土産品にもなっている。国際通りでは、店先に御守りとして小型のものが並んでいるし、「石敢當Tシャツ」もある。おなじく沖縄の代表的な魔除けキャラであるシーサーと合体して、石敢當シーサーなるものも売っていたりする…