沖縄ではお墓も本土とは様子が違う。親族の結び付きが強い沖縄では、お墓は非常に大切に扱われているし、墓参も盛大だ。墓の一つ一つがかなり大きく、中に人が入れそうな石造りの家型が、今の主流だ。各お墓の前には庭のようなスペースがあって、折々に一族が集まって会食する。会食時にはテントを張ることもあり、ヒモを結びつけるための金属環を、囲いの上にたくさん装備するのも流行っているようだ。集合霊園に家型のお墓がずらっと並んでいる様は壮観で、遠目には建売住宅分譲地のようにも見える。
より古い形のお墓に「亀甲墓(かめこうばか)」というものがある。風水的に良い場所の斜面に造られるかなり大きなお墓で、本土ではほとんど見られないが、沖縄には数限りなくある。亀の甲羅のようなドーム状の屋根を備えていることからこの名がついている。年を経た巨大な亀甲墓は、独特の風格のようなものが感じられる。
この亀甲墓、一説には「女の胎の型」であるとも言われる。死人は大地に横たわった女の股を潜り、子宮に還って行く…
祀る一族のある内は、墓は小奇麗に保たれる。しかし年月が経ち、世代が替わり、年を経た亀甲墓は、ゆっくり時間をかけて植物に覆われていく。もともと風水の良い場所なので、植物も繁茂する。
固有名詞が消え、個人の思い出が透明になり、ヒトの霊がぼんやりと昇華されてカミに近付く頃、亀甲墓は植物に飲み込まれて森になる。