もう何年も前のこと、ある秋の日に和歌浦へ向った。
和歌浦にいくつかある小さなビーチの一つ、波打ち際で遊ぶ子供達の姿。
その中の、熱心に石ころや貝を並べている幼児のことが、ふと気になった。
幼児の向かいに座り込んで、何をしているのか聞いてみると、「実験や」と答えてくれた。
「なんの実験?」
幼児は真ん中に渡してある針金を指差しながら説明してくれる。
「この線で石と石がひっついて、太陽が沈んだらこの線を通って、朝になったらまた出てくるんや」
なにやら宇宙的な実験中らしい。
私がすっかり感心して「年いくつ?」と尋ねると、幼児は「これだけ」と、右手の指を四本出して見せてくれた。
壮大な宇宙観と、まだ数がよくわからないことの、可愛らしいアンバランス。
私はまだまだ暑い秋の和歌浦で寝転がって、いつまでも続く幼児の宇宙的な実験を、横からずっと見学させてもらった。
そのときの思い出を元に描いたのが下の絵。
8号カンバスにアクリル絵具の、アナログ作品だ。
2009年09月02日
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