2006年02月07日
金烏玉兎
一冊の書物がある。名は「金烏玉兎(きんうぎょくと)」と言う。
これは通称であり、正式名称はもっと長いが、この正式名称に来歴が表現されているので読み解くと、
「天竺→唐→日本の三国相伝、陰陽・天地・日月にまつわる秘密の全てを網羅した安倍晴明撰の書」
と言うほどの意味になる。
由来によると、宇宙の秘密を余さず書き記したこの書は、日本の安倍晴明に伝わるまでに波乱万丈の物語があり、その霊験が語られているが、もちろんフィクション。
有態に言えば「偽書」の一種なのだが、では中身が全くの無価値かというとそうではない。
インドで生まれた仏教思想や宇宙観が中国の陰陽五行思想と習合し、日本流にアレンジされて結実した書物なので、「三国相伝」という表現も全くの嘘では無い。
大陰陽師・安倍晴明の流れを汲む人物が編述したのは確かであると考えられ、特に中国神話や陰陽五行思想は日本人好みの「物語」として、コンパクトにまとめられている。
こういうアレンジをやらせると、日本人は本当に巧みだ。つくづく日本は「物語」の国なのだと思う。
この「金烏玉兎」の第一巻が「方位」にまつわる巻であり、序が「牛頭天王縁起」になっている。先に紹介した「備後国風土記逸文 蘇民将来」を素材に、物語の舞台は天竺マガダ国から竜宮城へ、そして鬼王の治める夜叉国へと壮大に展開される。
それでは「牛頭天王縁起」の内容に足を踏み入れてみよう。
posted by 九郎 at 23:21| 節分
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