前回の記事の音遊び「不動明王」で素材にした「不動尊祈り経」は、本来は修験者が師から弟子へと面授で受け継ぎ、行の場で使用するものだが、文字に起こし、実際唱えている音源付きで公開している書籍もある。
●「修験道秘経入門」羽田守快(原書房)
著者は学研の「宗教の本」シリーズにも執筆している行者。この本には「不動尊祈り経」以外にも、なかなか目にする機会のない様々な修験道のお経がCDの音源付きで公開されている。
明治期まではこうした神仏習合の唱え言葉がたくさん残っており、それを駆使する修験者たちが民間のカウンセラーとして広く一般に役割を果たしていた時代もあったのだろう。
今、日常生活の中から行者さんたちは姿を消したが、こうしていまだに現役で使われている唱え言葉の数々が、デジタル音源で残されたことはとても貴重であると思う。
資料として音源が残されたことは喜ばしく、そうした公開があってこそ私も気楽に「音遊び」を楽しむことができているのだが、これはあくまで資料。今後もこうした「行」の在り方が「面授」で伝承される上で、特定の音源が広く公開されたことがどのように影響するか、考えさせられる部分もある。
このカテゴリカミノオトズレの最初の記事を、久々に自分で読み返してみたりした。
2009年11月30日
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拙僧の宗派でも、声明(梵唄)の技術については、DVDでの映像や、音源資料の収集が盛んになってきましたが、しかし、修得には面授でなくてはならないとされています。
音源や映像資料は「全体の底上げ」には非常に役立つと思います。ただやっぱり声明等は「ライブ」が肝心で、現場で融通を利かせてよい部分や、守らなければならない部分の細かなニュアンスは、面授で丁寧に伝えなければならないでしょうね。