この間コンビニに寄ったら、お茶のペットボトルのおまけに戦国武将のフィギュアが付いているのを目にした。
私はほとんどゲームをやらないので詳しく知らないのだが、戦国時代をテーマにした有名なゲームの主要な登場人物が揃っているらしい。
織田信長や伊達政宗に混じって、われらが雑賀孫市も並んでいたので思わず買ってしまった。
開封してみると「銃剣をかついだ雲のジュウザ」が入っていた(笑)
YouTubeで検索してだいたい感じをつかんでみた。
孫市のイメージとしてはもっとも流布している司馬遼太郎版「孫市」を下敷きにして、格闘要素もあるゲームのキャラクターとして、史実から大幅に飛躍してまとめてある印象。これはこれで面白く、史実との相違点を一々指摘するのも野暮というものだろう。
一点だけ取り上げてみると、ゲームの中で孫市が使う「銃剣」は、史実としては幕末期に輸入されたことになっている。戦国時代に使用されていたのは火縄銃なので、筒先に剣を付けて振り回すことは、危険すぎてたぶん誰一人実際には試さなかっただろう。ゲームキャラとして得意の「銃」で格闘させなければならない必要性から、設定されたのだろうか。
銃剣自体は幕末から明治以降、日本の軍隊でも使用された、それなりに実戦的な武器だが、実際に剣として使用すると銃身に狂いが出てしまうという証言もあるようだ。射撃または剣術の熟練者にとっては、どちらの機能も中途半端な武器であるかもしれない。
実在の孫市である「鈴木孫一」は、銃と槍を得意としたと伝えられている。もし戦国時代に銃剣に似た武器があったとしても、槍の使える銃の名手が、わざわざ銃としての精度が求められない代物を愛用したとは思えない。
雑賀孫市に関連した創作やコスチュームをやってみたい人は、一応上記のような史実を踏まえた上で、自由に楽しむのがいいと思う。
ガンダム・プラモの全盛時代、実際に存在する車や航空機、鉄道などの模型である「スケールモデル」のファンと、実際には存在しないアニメや漫画に登場するキャラクターの模型である「アニメモデル」のファンの間で、多少の軋轢が生じたことがあった。
写実性や史実の正確さが求められるスケールモデル派からすれば、アニメモデル派はぬるいお遊びに見え、アニメモデル派からすればスケールモデル派は、煩瑣な資料や技術にばかりこだわった面倒臭い人種に見えた。ファン人口や模型の売り上げは、圧倒的にアニメモデルの方に軍配が上がるところが、また話をややこしくする一因になった。
年月がたつにつれ、アニメモデル派も年齢層が上がり、他の色々な模型制作に手を広げていくことによって、現在の模型・フィギュア大国ニッポンが築かれることになった。
今、戦国ブームだ。
戦国時代を扱った漫画やアニメ、ゲームから入って、各地の戦国祭の武者行列にも、若いコスプレ層が参加するようになってきた。
お祭に多くの若者層が参加することは、単純に考えて凄くいいことだ。
年季の入った戦国ファンにしてみれば基礎的な史実を無視した扮装には奇異な印象を受けるかもしれないが、ここは一つ度量を広く歓迎してあげてほしい。
若い層は積極的に年上の戦国ファンと会話して、史実の奥深さや面白さを感じてみてほしい。
中世という時代は、一過性のブームで終わらせるにはもったいない、物凄く面白い時代なのだから。
2009年12月21日
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やはり、ゲームでのイメージというのは、色々と無理をしているのでしょうね。ここから、ちゃんとした歴史に入っていけば良いですが、このイメージが史実だと誤解されることが恐いですね。
拙僧の知り合いでも、こういうゲーム好きが高じて歴史の研究者になろうとした者がおりますが、余りの違いに愕然として、結局諦めてしまった者がいます・・・
どんなジャンルにも言えることだと思うんですが、「かたいことは言わずに自由に楽しむ」という層が裾野を広げ、その中から優れた専門家が生まれてくるということがあると思います。
私も司馬遼太郎の描く、史実としては不完全な雑賀孫市から入って、色々調べているうちに実在の「鈴木孫一」や石山合戦の真相に興味を持つようになりました。
楽しむことも、がっちり研究することも両方大事にしたいですね。
少し記事の方にも加筆しておきました。