雑賀衆について言及している書籍をあれこれ漁っているうちに、面白い小説を見つけたのでご紹介。
●「雷神の筒」山本兼一(集英社文庫)
著者は最近映画化された「火天の城」と同じ。「火天の城」は安土城築城に関わった技術者を主人公にした物語で、大名の華々しい活躍に焦点が向きがちな戦国時代小説として異彩を放っていた。
この「雷神の筒」は、織田信長の領国尾張で流通業を営んでいた橋本一巴が、商いの途中に出会った鉄砲の威力に魅せられ、やがて信長の鉄砲の師匠となり、織田軍鉄砲隊の中心人物になっていく様子が描かれている。われらが雑賀孫市も作中に登場し、主人公の手強い好敵手として活躍している。
主人公・橋本一巴は主に陸運業者として活動しているのだが、鉄砲の火薬に使用するため品薄になった塩硝を求めて旅するうちに、紀州から種子島、琉球までを股にかけて手広く海運業を営む雑賀孫市と出会うことになる。
雑賀孫市は鉄砲隊のリーダーとしての面ばかりが注目されがちであるが、実像の鈴木孫一は本業が漁業・海運業、他に割のいい副業として傭兵活動も行っていた可能性が高い。孫市の生業を史実に忠実な形で描写してある作品は珍しく、司馬遼太郎「尻啖え孫市」にも描かれていないので、そうした意味でもこの「雷神の筒」は興味深い。
流通業者であり、鉄砲隊を率いるリーダーでもある橋本一巴は、いわば織田家中の「もう一人の孫市」なのだ。
中でも興味深いのは、それまで海外からの輸入に頼るほかなかった塩硝が、国内で独自に精製され、流通に乗り始める描写だ。戦略物資の調達ルートの確保が物語の核になっている所など、知的興奮を呼び覚まされる。
鉄砲戦術についても詳細で、長篠の戦における有名な「織田鉄砲隊の三段撃ち」を冷静に否定する描写があり、リアリティに徹した姿勢は読んでいて心地よい。
孫市の登場する最近作の中では白眉だろう。
2009年12月29日
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雑賀孫八こと
孫市の会 森下幸生でございます。
お伝えしたきことあり、メール送ったのですが、
返って来ました。
ご連絡ください。よろしくお願いします。
メールさせていただきました。