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2010年02月26日

「さいが」か「さいか」か?

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 漫画版「雑賀六字の城」が掲載されている、「歴史街道増刊 大河」第二号が発売された。連載第二回も非常に面白い。いよいよ主人公が初陣に出発する。ちゃんと雑賀鉢をかぶっており、相変わらず細部の描写に手抜きがない。
 次回は船戦が開戦されるようで、目が離せない。
 是非ともこの調子で、原作を完全に漫画化してほしい。

 もう一遍、雑賀衆をテーマにした漫画を見つけた。隔週刊「プレイコミック」連載の「雷神孫市」(漫画:さだやす圭)だ。こちらは雑賀孫市が主人公なのだが、おなじみのさだやすキャラを孫市に当てはめて、活躍を楽しもうと言う趣旨の娯楽作のようだ。現在連載三回目。

 私は現在、雑賀衆や石山合戦の実像に関心を持っているので、どうしても創作作品にも正確な細部描写を求めがちになっている。しかし記述の正確さは、物語本来の面白さの一要素ではあっても、全てではない。面白さで言えば、やはり司馬遼太郎「尻啖え孫市」が飛びぬけている。
 一応そのことを確認した上で、少し書いておきたいことがある。「雑賀」という人名(あるいは地名)の読みに関してである。

 上で紹介した漫画版「雑賀六字の城」の表紙タイトルには「さいがろくじのしろ」という読み仮名がふってある。
 最初それに気づいたときに「おや?」と疑問に思った。
 一般には「雑賀」は「さいが」と読まれることが多いと思う。私も以前は何の疑問もなくそのように読んでいた。今PCで「さいが」と打ち込んでみても、普通に「雑賀」と変換される。戦国ゲームの人気キャラ・雑賀孫市も、ほとんどの人は「さいがまごいち」と読んでいることだろう。
 
 物語の中の「雑賀孫市」は、「鈴木孫一」という実在の人物を原型にしている。鈴木孫一は紀州雑賀庄の人物と言うことで、通称として「雑賀の孫一」と表現されたようなのだが、この雑賀庄という地名は「さいか」と読むので、本来は「さいかまごいち」と読むのが正しいはずだ。
 雑賀(さいか)という地名は現在でも和歌山市和歌浦に残っているので、地元の人はまず間違いなく「さいか」と読むだろう。その地名を知らない地元以外の人が、字面から読んだ場合に、「さいが」となるのではないだろうか。
 漫画版「雑賀六字の城」は、同名小説を忠実に再現してあり、その原作にも「さいが」と読み仮名が振ってある。しかし、原作小説の著者・津本陽は和歌山市出身で雑賀衆の血を引いているらしいので、地名としての雑賀(さいか)の読み方は、当たり前のように知っているはずだ。
 それなのに何故かわざわざ当該作品では「さいが」と読ませている。
 さらにややこしいことに、同じく津本陽の別の作品「鉄砲無頼」等では、何故か「さいか」という読みになっていたりする。
 このあたりの事情はよくわからないのだが、漫画版「雑賀六字の城」はリアルな細部描写が「売り」の作品になるはずなので、「さいが」と読ませている点は何とかした方がベターではないかという気もする。

 ちなみに手持ちの小説・漫画作品に登場する「まごいち」の表記と読み方をまとめてみると、以下のようになる。

●司馬遼太郎「尻啖え孫市」・・・雑賀孫市(さいかまごいち)
山本兼一「雷神の筒」・・・雑賀孫市(さいかまごいち)
神坂次郎「海の伽耶琴」・・・雑賀孫市(さいかまごいち)
津本陽「雑賀六字の城」・・・鈴木孫一(すずきまごいち)
川原正敏「修羅の刻」・・・雑賀孫一(さいかまごいち)

 多少なりとも時代考証を心がけた創作作品では、総じて一般に知られた「雑賀孫市」の表記を使用しながらも、「さいか」と正しく読ませるようにしている場合が多いようだ。
posted by 九郎 at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 和歌浦 | 更新情報をチェックする
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