
桜の季節だ。
毎年桜を見ると思い出すことがある。
学生時代、私は所属していたサークルの「部室」を主な居場所にしていた。部室は学校校舎から離れた「学生集会所」、築数十年を経た倒壊寸前の建物の一室にあった。いくつかのサークルの部室が古アパートのように入居していて、部外者からは「お化け屋敷」と囁かれていたが、「住人」にとっては「住めば都」で、楽しく時間を過ごしていた。
以前このブログの「記憶の底6」http://en-nichi.seesaa.net/article/11844390.htmlでも紹介したが、私は「フクザツな造りの古い建物」には愛着があって、この部室はそんな私の好みにぴったりだった。
学生集会所の中庭には桜の老木が一本立っていた。
伸び放題の生垣に周りを囲まれ、日照条件は最悪、手入れもされずに打ち捨てられた老木は年々樹勢が衰えて、枝は落ち、幹は腐っていた。
さすがにみかねた私は(素人判断ではあったが)明らかに腐っている太い枝を何本か切除し、少しは日が当るように(無断で)生垣の枝を払った。
その後、老木は何度かの花の季節を無事に飾ったようだ。
私がその愛すべき場所に行かなくなって数年後、部室は建物ごと撤去になったらしい。「らしい」という伝聞なのは、懐かしい部室が消えてしまった現場に立つのが嫌で、その話を聞いてから一度もそこに行っていないからだ。
桜の樹もどうなったのか知らない。