全てを飲み込む暗黒、全てを消し去る時間の流れは、シヴァの破壊の側面を表していると考えられた。
マハーカーラは仏教に吸収された後も、破壊神としての属性を色濃く残していた。密教図像における「大黒天」は、我々にとって馴染み深い「だいこくさま」とは似ても似つかぬ恐ろしい姿をしている。
青黒い怒りの形相。
三面六臂三眼にして髑髏と蛇で身を飾り、火炎髪。
右第一手に剣をとり、膝上に横たえた刀身を左手に握り、
右第二手には餓鬼、左第二手には山羊を引っさげ、
左右第三手になまぐさき象の皮を被る。
屍林を徘徊し、無数の鬼神・眷属を率いる鬼神の王。
人間の血肉を貪り喰らう夜叉神「ダーキニー」を降伏させ、人間とも血肉を介して取引する魔神。
インドから遠く離れた日本においても、この形の「大黒天」は、一種異様な信仰形態を作り出して行くことになる。
七福神の「だいこくさま」は、直接にはこのマハーカーラまでさかのぼる。