神話によると、シヴァには数百の神妃がいるとされる。その中でも代表的なのがパールヴァティー(またはウマーと呼ばれる)で、ガネーシャとスカンダの母であると伝えられる。パールヴァティーは優美・柔和で、情熱的な女神としてシヴァの寵愛を受けている。
シヴァに両義性があったように、シヴァの妃にもパールヴァティーの暗黒面と呼ぶべき破壊の女神達が存在する。名をドゥルガーとカーリーと言う。
【ドゥルガーの神話】
はるか昔、マヒシャという強力な魔神が現れ、軍勢を率いて神々を退け、天界の支配者となった。神々にたすけを求められたシヴァとヴィシュヌは、光を放ってドゥルガーを生み出した。二神の怒りから生まれたドゥルガーは、獅子に乗り、三叉戟をはじめとする数々の武器を取って、魔神の軍勢をことごとく滅ぼした。
カーリーは、さらに強力な殺戮と破壊の女神の極致として現れる。
【カーリーの神話】
魔神達の活動は激しく、世界に戦いが尽きることは無かった。ドゥルガー(またはパールヴァティー)が魔神たちと対峙した時、その顔の中から真っ黒な恐ろしい女神が現れた。
その女神カーリーは、目を血走らせ、絶叫しつつ魔神たちを次々に切り刻み、食い殺し始めた。しかし魔神の血が大地に滴り落ちると、そこから無数の魔神が生まれて襲い掛かってくる。それを見たカーリーは、殺した魔神の血を飲み干しながら戦った。
殺し尽し、食い尽し、飲み尽して、魔神の軍勢を滅ぼしたカーリーは、勝利に舞い狂った。カーリーの狂喜乱舞は激しく、大地すら破壊されそうになった。その耳にはもはやシヴァの声すら届かない。
シヴァは彼女の足元に横たわり、その足踏みを受け止めて大地を守った。
カーリーはようやく正気を取り戻した。
殺し尽し、踊り狂った後の魂の平安・・・
追記;「カーリー」は「カーラ」の女性形で、「黒」「時間」を表す。
また、カーリーは「大地の女神」であるとも伝えられる。
2006年04月16日
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