約2500年前、釈尊によって開かれた仏教は、時を経て古代インドの神々の体系や思想を吸収し、精緻な宇宙観を作り上げた。
上の絵図はその宇宙観をまとめたもので、表記の便宜上、縦横・大きさの比率はいじってあるが、位置関係や階層構造の参考にしていただきたい。
何も無い虚空の中に、気体である「風輪(ふうりん)」が浮び、その上に液体である「水輪(すいりん)」、固体である「金輪(こんりん)」の層が有り、世界はその上に展開されている。水輪と金輪の間が「金輪際」で、「こんりんざい」の語源である。
世界の周囲を囲む「鉄囲山(てっちせん)」の輪の中に海があり、世界の中心には「須弥山(しゅみせん)」がそびえている。須弥山の周囲は七重の山脈「七金山」に囲まれており、山脈の合間にはそれぞれ海がある。須弥山と七金山、鉄囲山で合計九山、その間の海が八海あるので、この世界を「九山八海(くせんはっかい)」と表現する。
一番外側の海には東西南北に四つの大陸がある。我々が住むのは須弥山の南にある「閻浮提(えんぶだい)」で、台形をしているのはインド大陸のイメージだと思われる。
人間の住む金輪表層の地下深くには地獄の世界が広がっており、須弥山の中腹辺りまでは阿修羅や竜王が住んでいる。それより上が神々の住む天界になっており、太陽と月である日天・月天は、須弥山の中腹あたりの軌道を巡っている。
地獄・餓鬼(がき)・畜生(ちくしょう)・修羅・人・天の六つの世界「六道」の輪廻転生は、このような世界観の中で展開される。
続けて、天界の構造を見ていってみよう。
第一天が「四大王衆天(しだいおうしゅてん)」で、四つのテラスからなる四天王(持国天・増長天・広目天・毘沙門天)の支配する世界。
第二天は帝釈天の支配する「三十三天」で、須弥山の頂上にあたる。ここまでが地上の世界。
第三天「夜摩天(やまてん)」より上は空中に展開される。
第四天「兜率天(とそつてん)」は、次代の仏・弥勒菩薩が修行をしている世界。
第五天は「楽変化天(らくへんげてん)」。
第六天は「他化自在天(たけじざいてん)」。ここまでの世界はまだ欲望にとらわれた世界なので、「六欲天(ろくよくてん)」と呼ばれる。
上掲の絵図ではここまでしか表記していないが、ここから上には禅定者の世界が続いていくことになる。仏教は(神々を含め)欲にとらわれた六道の世界を脱却することを目指しているのだ。
古代インドの神々は「天部」として仏教に取り入れられ、主に第六天以下の世界に配置されていった。禅定者以外では第六天が最高位とされるが、この世界には一人の魔王が存在して、欲の世界を支配している。
その名を「第六天魔王」と言う。
2006年04月24日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック