私は特定の宗教団体に所属していない。信仰を持っている友人は何人かいるし、なにがしかの行事に参加することもあるが、基本は無所属・独学を通している。
絵についても同様で、仏画についての専門に学んだことはなく、自分で資料を探して好き勝手に描いている。ただ、先人の残した図像には貴重な知恵がたくさん詰まっているので、出来る限り調べた上で、好き勝手に描く。
そんな私が普段から一番参考にしているのが、この一冊。
●「曼荼羅図典」染川英輔 著
仏画や曼荼羅は、鑑賞する分には実物やカラー図版がいいのだが、いざ自分で描こうとしてみると、白描画(輪郭線を毛筆で描いたもの)が、どうしても必要になってくる。神仏に限らず動植物についても、絵の資料には写真よりも線画の方がありがたい局面が多々ある。カラー図版は、ものの雰囲気を掴むには良いのだが、細部を理解するには白描画が一番なのだ。
この「曼荼羅図典」には、金剛・胎蔵両部曼荼羅の膨大な仏尊の全てが精密な白描画で紹介されており、文章による解説部分も素晴らしく詳細だ。
両部曼荼羅には主な仏尊がほとんど網羅されているので、事実上の仏教百科事典であるとも言える。やや高価な書籍だが、図書館にもよく入っているし、断片的な資料を一つ一つ拾い集めていくよりも、包括的で内容の確かなものを一冊持っていると非常に便利だ。
私もいつの日にか両部曼荼羅を自分なりに描いてみたいと思っているので、実際に描き上げ、その上貴重な資料の全てを公開してくださった大先達には心の底から敬意を表し、ここに紹介するのである。
2006年05月11日
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