1月10日はゑびすの縁日。
九日は宵ゑびす、十日が本ゑびす、十一日が残り福で、各地の恵比寿神社が一年のうちでもっともにぎわう時期だ。
今夜は宵宮。
近所に、十日恵比寿でけっこう盛り上がる神社がある。
ちょっと出かけてきて、今帰ってきたところだ。
商売繁盛の神様らしく、縁起物の出店が立ち並び、俗で猥雑な何とも言えない色彩を闇の中に浮かび上がらせている。
他にも神社の周囲には所狭しと様々なテキ屋がひしめいて、そぞろ歩きの足取りも自然に浮き立ってくる。
たまらず屋台にとびこんで、一杯ひっかける。
サザエの壺焼きと日本酒。
前から一回やってみたかったのだが、今までなんとなく他のお店や食べ物が優先されて、試してみずにいた。
いや、なかなかいいものですね。
各地の神社仏閣の縁日から、だんだんテキ屋さんの姿が消えつつある昨今だが、ここではまだまだ健在だ。やっぱり縁日の風景は、こうでなければ。
サザエのスープをすすり、縁日模様を眺めながら、色々妄想する。
えべっさん、ゑびす神は、日本神話のヒルコ、またはコトシロヌシであるとされる。
ヒルコは蛭子、イザナギ・イザナミの長子でありながら、不完全な神であるとして流された漂泊の神。
コトシロヌシは、出雲の大国主の息子で、国譲り神話で最後の決断を任された神。今ポピュラーな「釣りをするゑびす」の姿は、この神のものをベースにしている。
二つの由来は全く系統が違うが、「追放された漂泊の神」という点では、何故か一致している。
縁起物にはよく「恵比寿大黒」のコンビで登場しており、まるで友人かよく似た兄弟のような雰囲気だ。
しかし大黒の淵源はインド神話の破壊神であり、同時に日本神話の大国主でもある。
大黒が大国主であるとするならば、このコンビは「親子」ということになる。(大黒については、カテゴリ大黒で詳述)
縁起物では、このコンビに加えて「おかめ」の面が加わる場合も多いが、この「おかめ」を女神の象徴ととらえるなら、「弁天」のイメージも重なってくる。
そうなると、「恵比寿・大黒・おかめ」のトリオの縁起物は、もしかしたら三面大黒と近い神話的なイメージがあるのではないか?
ゑびすの縁起物と言えば、すぐに笹や熊手、箕をベースにしたものが思い浮かぶ。
笹や竹を素材にした工芸品と言えば、今の私がすぐに連想してしまうのが、山の民。
ここにも「漂泊」のイメージ。
ふと気づいてみれば、自分は今まさにテキ屋さんの店先で一杯飲んでいる。
縁日が終われば、風のように消えていく「市」の真っただ中。
徐々に縁日の風景からの排除が進む店先。
ゑびす神は商売の神で、日本では商業が発達した中世の時点では、商人はいわゆる「良民」の部類からは外れた存在であったという。
酔っ払いの妄想は一巡りして、何かが繋がりそうな予感に、ぶるっと身を震わせる。
そんな宵宮。
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