東寺は高野山とともに真言密教を代表するお寺。「密教テーマパーク」とも言うべき仏像や建築物の数々が楽しめる上、宝物館では過去にも様々な興味深い展示が催されてきた。今回は貴重な密教白描図像が生で見られる展示で、独学の神仏絵描きには数少ないチャンスだ。
出来る限り入場者数の少なそうな時間帯を選んで足を運ぶ。私が足を運んだのは雨天の朝一、狙い通りわずか数人の入場者だった。ガラス越しとは言え、素晴らしい資料の数々を、思うがままの独り占めで観察、心行くまで堪能する。展示点数こそ少なかったが、いずれ劣らぬ超一級の名品ばかり。
中でも「大元帥曼荼羅図(十八面三十六臂)」の白描図、「仁王経五方諸尊図」「兜跋毘沙門天立像」を見ることが出来たのは、素晴らしい体験だった。とくに「兜跋毘沙門天立像」は、「カテゴリ:大黒」の今後の展開とも絡んでくる。このタイミングで実物に対面できたのは、いい刺激になった。
今回の展示品の多くが収録された図録「東寺の密教図像」(1999年発行で残部僅少)を入手できたことも、嬉しい収穫。前出「大元帥曼荼羅図(十八面三十六臂)」の白描図、「仁王経五方諸尊図」が、それぞれ1ページ大で収録されており、他にも有名な図像集がてんこ盛り。
無くなる前にゲット出来て、本当に良かった。
以前まとめた「カテゴリ:節分」で、「鬼門大金神」の図像と密教図像の類似について書いたことがある。
今回入手した図録「東寺の密教図像」の中に収録されている、「仁王経五方諸尊図」西方の一尊(下図右)が、高御位神宮蔵の「鬼門大金神」(下図左)の元図像になっているのは、比較してみれば誰の目にも明らかだろう。

それでは何故、この密教尊が「鬼門金神」に読み替えられたのか、記事を書いたときにはよくわからなかったのだが、今回図録を眺めていて、件の密教尊が「西方」に配されたものであることに気が付いた。「西方」と言えば、陰陽五行では「金」に相当する。このあたりに読み替えの理由がありそうな気がするので、心覚えに文字にしておこう。