●「沖縄文化論―忘れられた日本」
沖縄論の古典とも言うべき必読書。中公文庫に収録されており、価格も安く入手も容易。初版の刊行は1961年であり、内容の大半は復帰前の沖縄の生々しい現地レポートだ。
岡本太郎のモノを観る視点は、限りなく知的で醒めており、表現は的確だ。生粋の日本人でありながら、日本を突き放しつつ、誰もが忘れ去ってしまった日本の古層に横たわる美を抉り出す。
縄文土器の美を世界中で最初に見出したのは岡本太郎であったし、沖縄についても戦後最初の紹介者にあたるのではないだろうか。沖縄に対する視点、分析は、とても60年代初頭に書かれたとは思えぬほどに新しい。
試みにいくつか章題を書き出してみよう。
・「何もないこと」の眩暈
・踊る島
・神と木と石
・ちゅらかさの伝統
・神々の島 久高島
これらのキーワードは、現在でも多くの人々によって研究され論じられているものばかりだ。沖縄にまつわる主要な論点は、60年代の時点で既に、岡本太郎の透徹した感覚によって捉えられていたことになる。
沖縄に興味を持つ人には、まずこの一冊をお勧めしたい。
●「岡本太郎の沖縄」
こちらは「沖縄文化論」執筆と同時期に撮影された、岡本太郎自身によるモノクロ写真の数々を、岡本敏子が編集したもの。「沖縄文化論」にもいくつかの写真は紹介されているが、本格的な写真集で見ると圧巻だ。
岡本太郎特有の、光と闇のコントラストの強烈な写真の数々が「岡本太郎の見た沖縄」を生々しく記録している。
とくに昔の沖縄のおばあさん達を撮った素晴らしい写真が多い。
私は大本教に興味があって色々資料を漁っているのだが、大本開祖・出口なおの写真を観た時の衝撃と似た感動を、この写真集の沖縄のおばあさん達の写真に覚えた。長い年月に洗い晒された銀髪と、誇り高い毅然とした表情が、両者に共通している。
私は以前カテゴリ沖縄で「本土では神木クラスの樹木が、沖縄ではごく普通に生い茂っている」と書いたことがある。人間についても似たことが言えるのかもしれない…
この写真集は2000年発行。「沖縄文化論」と合わせて是非手にとってもらいたい一冊なのだが、先ほどAmazonで調べてみると、どうやら入手困難になりつつあるようだ。もったいない話である。
太郎の著作が次々に復刊する気運の盛り上がる2011年現在、ぜひこの一冊にも復活してほしいものだ。
岡本太郎と沖縄については、私の中でまだ整理のついていない問題もある。
事実は事実として考えて行きたいと思っている。
今回、岡本太郎を紹介するにあたって、沖縄関連書籍を再び紹介するかどうか迷いもあった。
関心のある人は「岡本太郎 風葬」等のキーワードで検索してみてほしい。
(2006年7月の記事を加筆再掲)