
【荼吉尼天(だきにてん)】(上図右)
インド神話でマハーカーラの眷属、またはカーリーの侍女と伝えられるダーキニーは、仏教に読み替えられて荼吉尼天となった。シヴァに連なる女神である。
墓場にたむろし、人間の肝や心臓を貪る鬼女神は、大黒天に化身した大日如来に降伏され、仏教に帰依したと(仏教側からは)説明される。
恐ろしいルーツそのままに胎蔵曼荼羅最外院でも上図右のごとく、頭蓋骨の杯で血を飲み、人間の手足を喰らう姿で描かれる。
【吉祥天(きちじょうてん)】(上図左)
インド神話三大神の一、ヴィシュヌの神妃で福徳の女神ラクシュミーは、仏教に読み替えられて吉祥天になった。「きっしょうてん」とも読む。ヴィシュヌは仏教においては影が薄く、吉祥天も毘沙門天の妻神とされることが多い。
日本では弁才天とともに仏教の女神の代表格であり、同一視されることもある。
【弁才天(べんざいてん)】(上図中央)
インド神話の河の女神サラスヴァティーは、仏教に読み替えられて弁才天となった。サラスヴァティーは、インド神話三大神の一であるブラフマーが、自身の体の中から作り出した神妃と伝えられる。
元々が河の女神なので、作物を実らせる豊穣を司る。豊穣の力を基点として、他の女神の功徳も吸収し、財福や技芸の女神へと読み替えられていったと思われる。
弦楽器を構えた二臂の姿が一般的だが、様々な武器を構えた八臂の軍神としても広く信仰を集めている。
仏教の女神の中でも代表的な荼吉尼・吉祥・弁才の三女神のルーツを辿ると、それぞれインドの三大神にまで行き着くのは興味深い。