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2006年06月25日

神々の合体3 後戸の神

 伝教大師最澄の開いた天台宗の、第三代座主・慈覚大師円仁。
 密教の奥義を求めて入唐し、約十年の滞在後、帰国。その帰国途上の船中で、彼は謎の神を感得した。その神「摩多羅神(またらじん)」は、円仁に「我は障碍の神、我を崇敬しないならば往生は遂げられぬ」と告げたと言う。後に延暦寺常行三昧堂の守護神として祀られた。
 念仏や阿弥陀経の守護神にして、敬わない者の往生を妨げる神。念仏会には本尊の後戸に祀られる秘密の神…
  
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 上方には北斗七星。
 一説によると衆生はここから生まれ、ここへ還ると言う。
 雲間の下、竹林の中の図像中央には、狩衣姿の異形の神。
 笑み崩れつつ、椅子に座って鼓を打つ。
 神の鼓に合わせるように、下方には楽しげに踊る二人の童子。
 左の童子は丁礼多(ていれいた)、右の童子は爾子多(にした)。
 二人の童子は両手に茗荷と笹を持ち、忘我の体で踊り狂う。
 左の童子が「シシリシニ、シシリシ」と唄えば、
 右の童子は「ソソロソニ、ソソロソ」と唄う。
 なにやらアヤシイ意味ありげな囃し言葉…

 この摩多羅神、後に大黒天と同体とされるようになった。例によって「摩多羅」と「摩訶迦羅(まかから=マハーカーラ)の名前の類似が、一般的な説明として紹介されている。
 またこの摩多羅神が人々の往生にあたって肝を要求することから、同種のエピソードを有する荼吉尼天(だきにてん)とも繋がる。
 図像的には「鼓」「踊り」の要素は、シヴァとも通ずるものがある。

 この摩多羅神を本尊とする一部の儀式、江戸時代には邪教として禁止されるようになったと言う…
posted by 九郎 at 17:31| Comment(2) | TrackBack(1) | 大黒 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
> 管理人様

いつぞやは、地蔵菩薩のことでは失礼いたしました。

さて、今回ご紹介の「後戸の神」について、拙僧も考えたことがございます。TBいたしますが、お暇なときにでも、ご意見等頂戴できれば幸いでございます。合掌。
Posted by tenjin95 at 2006年06月25日 20:46
>tenjin95さん

 TB&コメントありがとうございました。
 本職の方に見てもらってるのがわかると、励みになりますね(笑)
 以前おじぞうさまでTBをいただいて以来、そちらのブログもよく閲覧させてもらっています。
Posted by 九郎 at 2006年06月25日 23:04
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Tracked: 2006-06-25 20:46