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2006年06月30日

神々の合体4 蛇と狐と女神

 インド神話におけるマハーカーラの眷属またはカーリーの侍女ダーキニーは、仏教に読み替えられて荼吉尼天となり、日本においては稲荷信仰と結びついて狐にまたがった女神の姿でイメージされるようになった。

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 稲荷は穀物等の「食」の神で、狐を眷族とする。稲荷と言えば誰もが連続する朱の鳥居と一対の狐の像が思い浮かべるだろう。狐は本来稲荷神そのものではないが、一般には「稲荷=狐」としてイメージされることが多い。
 動物学的な狐ではなく、人々のイメージの中の狐は「女」であり、「墓地」に出没する一種禍々しい精霊だった。
 こうしたイメージは、墓場にたむろする恐ろしい女神ダーキニーとよく共通している。狐にまたがる荼吉尼天は、神話的にも図像的にも大変面白い。

 また、日本の稲荷信仰の元締め、伏見稲荷大社には祭神として「宇迦之御魂神(うかのみたま)」が祀られている。宇迦之御魂もまた「食」の神であり、作物を実らせる「水」の神、「大地」の神でもあった。
 多くの場合「水」の神は、竜や蛇の姿でイメージされる。宇迦之御魂の図像には人頭蛇身の姿で描かれたものも数多い。
 やがて「水」の神としての宇迦之御魂は、インド神話の河の女神サラスヴァティーを源流とする弁才天と重ねられるようになった。日本の弁才天の図像の多くには、頭上に小さくトグロを巻いた人頭蛇身の神がのせられている。
 日本の有力な弁才天信仰の一つ、天河弁財天信仰の流れには、さらに驚くべき図像が伝えられている。
  
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 上図は「天川弁才天曼荼羅図」の中央に描かれている「弁才天」を参照したものだ。「天川弁才天曼荼羅図」は、三頭十臂の大蛇神を中心に、背後には燃える如意宝珠を頂いた三山、周囲には数えきれないほどの如意宝珠がちりばめられ、女神や童子、蛇神に狐、半裸の男女など、意味ありげなイメージが舞い踊る異様な図像だ。
 中央の「弁才天」は、三つ首の大蛇の顔は恐ろしいけれども、衣装は上品な女神のそれであり、よく見るとおしゃれをしてすましている表情も見えて愛嬌がある。

 インド発祥の美しさと強さ、恐ろしさを併せ持つ女神達は、日本において蛇や狐と結びつき、はたして偶然か必然か、その本来の属性そのままに信仰されていたようだ。
posted by 九郎 at 18:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 大黒 | 更新情報をチェックする
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