報道で大きく扱われなくなり、なんとなく終息した雰囲気に持っていきたい何者かがいるのではないかと勘繰りたくなるが、今現在、福島第一原発からは放射能漏れっぱなしの状態である。
どこかに「穴」が開いているらしいことは分かっているのだが、それがどこなのか確かめる術は無い。
初期段階に起こったような爆発的な放出は一応止まっているものの、中身をたしかめられないので今後のことは誰にも確定的なことは言えない。
中身が分からないのでとにかく水を注入して冷やし続けているが、それは放射能に汚染された物質の量を、薄めて増やしていることともイコールだ。
放出された放射能は、自然現象や物流によってじわじわ広がって行く。
広がって行くことによって希釈される場合もあるが、生物濃縮や、風、雨水の流れによってピンポイントで濃度が上がる場合もある。
今後日本人は、本来原発内に閉じ込めておかれるべきだった放射能と、つき合いながら生きて行くしかなくなった。
地獄の釜が開きっぱなしの狭い国土は、否応なく「ぬるま湯地獄」と化していく。
今フタが開いているのは一か所だけだが、そのフタが開いた原因は「千年に一度の大津波」などではなく、「震度6の普通地震」で開いてしまったことが既に判明している。
震度6の普通地震は、地震国では普通にどこでも起こるので、日本国中に散らばった地獄の釜の、今は一応閉まっているフタ(隙間くらいは開いているかもしれないが)は、いつ外れてしまうか分からない。
日本の国土には、主に西から東に向かう風が吹いている。
福島では「不幸中のほんのひとかけらの幸い」として本州の東端のフタが開いてしまい、放出された放射能の大半は太平洋側に流れて行ったが、西日本のどこかでフタが開いてしまえば、今回とはレベルの違う地獄濃度が人口集中地域を襲う。
一見穏当に見える「段階的脱原発」ではなく「即時停止」が是非必要なのはそのせいだ。
私自身は今のところ大きく生活様式を変える必要は無いと判断しているが、それは住んでいる地域・年齢・性別によって様々に変わるので、各自が自衛しなければならない。
日本国は既に放射能汚染から国民を守ることを放棄していると思われるので、東日本の皆さん、とくに子供を持つご両親は、自力で情報を収集しなければならない。
ただ、必要以上に不安を感じて無理な生活様式を強行しようとすると、そのことの方が放射能の害そのものより肉体と精神を疲弊させてしまうことは十分にあり得る。
腹立たしいことではあるが、日本はすでに「ぬるま湯地獄」になってしまって、私たちは通常この国で暮らし続けざるを得ないのだから、「無理のない程度に気をつけて、少しでも生活圏から地獄を遠ざける」という対応策をとるしかない。
あまり生真面目に悩むのではなく「笑って暮らせる程度の努力」を生活の中で心がけることが、一般庶民にできる唯一の対応策だと思う。
無理なく楽しく暮らしながら、こうした状況を自分たちに強いている国と電力会社に対する怒りを末永く持続させ、諦めることなく原発の息の根を止めなければならない。
3.11以降の反原発は、楽しいものでなければならない。
無理のないものでなければならない。
決して忘れず、諦めないものでなければならない。
ファッションでかまわない。
商売でかまわない。
冗談交じりでかまわない。
一枚岩でなくともかまわない。
ただ一点「原発NO」で一致していればいい。
当たり前の生活スタイルとして放射能に対する知識を得て、原発にNOと言わなければならない。
節電は大切だが、それは「原発がとまると電気が無くなるぞ」という恫喝に屈するのではなく、日本人の美徳「もったいない精神」で行われなければならない。
現時点で、原発抜きでも電力は足りている。
酷暑のさなか、体調を崩してまでエアコンを止める必要はない。
武田邦彦という人がいる。
元は国の原子力推進政策の現場にあった人だが、原発の耐震基準に疑問を持ち、やや距離を置くようになったという。
3.11以降は完全に「反原発」それも「即時停止」に転向し、少しでも放射線被曝を避けるための方法を、毎日自分のブログで公開するようになった。
その記事は極めて平易な言葉で綴られており、また極めて具体的かつ無理のない方法が提示されているので非常に参考になる。
自分の半生を費やしてきた原子力が、福島で破局的な事故を起こしてしまったことに、深い罪悪感を持っているらしく、国と東電の虚偽と無責任で塗り固めた事故対応を告発する筆致には鬼気迫るものがある。
とにかく、気になる見出しからまずはご一読!
武田邦彦(中部大学)
ブログの記事をまとめた新書も刊行されている。
●「放射能と生きる」武田邦彦 (幻冬舎新書)
この人もまた、毀誉褒貶の激しい「異能の語り部」である。
地獄で笑って暮らすために、無理のない理論武装を!
2011年07月27日
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