友ヶ島諸島のうちの「神島」は、古くは「淡嶋(アワシマ)」と呼ばれていたと伝えられる。友ヶ島を代表する沖ノ島の北側に、プッと吐き出されたように浮かぶ小さな小さな島が神島。沖ノ島をオノゴロ島に見立てると、「神島=淡嶋」はちょうど国生み神話の風景と重なるようにも見える。
神島には古くから大己貴命(オオナムジノミコト)と少彦名命(スクナヒコナノミコト)が祀る祠があったと言う。オオナムジは大国主の別名、スクナヒコナは大国主に協力して国造りを行った神だ。
スクナヒコナは「日本書紀」によると、高皇産霊(タカミムスビ)神の子で「いたずらをしていて指の股からこぼれ落ちた」と伝えられる。非常に小さな神であり、ガガイモの実の舟に乗って漂着した所で大国主と出会い、以後心を一つにして国を治めた。
最後は再び旅立って常世の国に至ったという。
スクナヒコナもまた漂着神の一柱のようだ。

スクナヒコナは「淡島明神」としても祀られることがある。
木の葉の衣をまとい、穀物の穂をささげもち、頭には二つの突起がつく場合もある。これは「神農(しんのう)」と言う神と習合したことに由来する。神農は広く中国の民間で信仰された神で、二本の角を持ち、木の葉の衣を着て、草を噛む姿で描かれる。様々な植物を齧ってその性質を確かめ、医薬や農業を創始した神だ。
スクナヒコナもまた、医療に長けた神なので習合したらしい。
アワシマとスクナヒコナ、漂着神どうしの不思議なイメージの交錯…