例年、仕事で子供相手のクリスマス会のお手伝いをしている。
その会で毎年流されるビデオに、子供たちと一緒になってけっこう見入ってしまう。
●「ジミニー・クリケットのクリスマス」
1995年発売のVHSビデオ。歴代ディズニー作品の中から「クリスマス」に関する短編を集めてあり、『白雪姫』『ピノキオ』『シンデレラ』『ファンタジア』等の有名作からもちなんだシーンが抜粋されている。
かなり厳選され、よく吟味された編集になっていて非常に楽しめる。
自分でも入手したいと思い、また他人にも勧めたいと思って今回調べてみたのだが、残念ながらVHSの中古品のみでDVDにはなっていないようだ。
私は子供の頃ディズニーはさほど見ていなかったので、仕事の合間にほとんど初見の印象で上記の有名作の映像を眺め、その素晴らしさにびっくりしていた。
かえって古い作品の方が「動き」の面白さに満ちているように思えた。
とくに『ファンタジア』の映像美に驚愕して、アニメの技術の発展の意味って何なのだろうと、あらためてあれこれ考えさせられた。
何よりも『白雪姫』の指先の表情まで行きとどいた「演技の上手さ」に唸ってしまった。
恥ずかしながら大人になってからディズニーアニメの凄みに気付いて、それ以後機会があれば逃さず見るようにしている。
このビデオを毎年眺めている内に、それまでは「メジャー過ぎて自分とは縁遠い」と独り決めしていたディズニー作品の中に、気になるモチーフが頻繁に登場することに気付いた。
たとえば収録されているモノクロ短編では、主演のミッキーマウスは愛犬プルートとともに路上演奏で日銭を稼ぐ、しがない大道芸人になっている。
クリスマスの夜、芸人ミッキーは、とあるボロ家の窓から哀しい情景を覗いてしまう。
暗い部屋の中、机に突っ伏して泣き暮れる女性。
飾られた写真には、おそらく夫であろう男性が牢屋に入っているところが写っている。
部屋の奥のベッドには、それでもサンタの夢を見ながらスヤスヤと寝入る、びっくりするほどたくさんの子供たち。
深く同情したミッキーは、金持ちの家に愛犬を売り渡すことで、この哀れな家庭にたくさんのプレゼントを用意することに決めるのだが……
こうしてあらすじを文章に起こすと、陰鬱でどうしようもない印象になってしまうかもしれないが、さすがにミッキーマウス主演作なので、良い子にも安心して見せられる趣向に仕上げられている。
この作品には大道芸人や、ヤクザ者とその家族が登場するが、考えてみるとディズニーアニメにはこうしたマージナルな存在がけっこう頻繁に登場する。
森の小人や魔法使い、ジプシーやせむし男等はすぐに思いつくところだ。
そうしたかなりきわどいモチーフを、単なる小道具ではなく中心に据えながら、それでも世界中の子供たちに親しまれる作品に仕上げていくところに、ちょっと怖いような凄みを感じてしまう。
今回紹介したミッキーマウス主演「ミッキー街の哀話」は、宝島社から出ているDVD BOXに収録されているのを発見した。興味のある人は手に取ってみてください。
ミッキーマウス DVD BOX vol.4
2011年12月25日
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