大阪の万博公園に今もすっくと立っている「太陽の塔」。
あの作品は、なぜ大阪万博からはるかに時が流れた今でもあそこに残っているのか?
多くの人はその理由を、以下のように理解しているのではないだろうか?
あの塔は大阪万博の開催にあわせて作成されたシンボルタワーで、万博が終わった後、他の仮設パビリオンが撤去された後もずっと残されることを前提に作成された……
今「太陽の塔」を眺めると、自然とそんな風に解釈し、確認する必要もない当たり前のこととして認識しがちだ。
私ももちろんそうだった。
ところが、違うのだ。
そもそも大阪万博のシンボルタワーは別に建設されており、それは今はもう存在しない。
問題の「太陽の塔」は、万博会場の設計に途中から挿入された「異物」であり、実は機能的には膨大な観客を滞留させずに流すための「通路」として作られたという。
それがいつの間にか大阪万博を象徴するシンボルとして誰の心にも認識されるようになり、半年もたてば解体されるはずだった仮設の構造物が40年を超える命を持つに至ったのか?
戦後の日本が世界デビューを果たすために、国家の威信をかけて取り組んだ巨大プロジェクトに、なぜそのようなイレギュラーな「異変」が起こったのか?
おそらく日本史上空前絶後の「マツリ」だったであろう大阪万博の、熱狂の渦の中心部分に岡本太郎という個性が居合わせたことの不思議。
その謎を解読することは、ほとんどそのまま岡本太郎と言う存在と直面することと同義になる。
●「岡本太郎」平野暁臣(PHP新書)
●「岡本太郎と太陽の塔」平野暁臣 編著(小学館クリエイティブビジュアルブック)
そんな謎について考えるための材料を提示してくれるのが、これらの二冊。
大阪万博の熱狂を実体験した人にも、また今現在の「太陽の塔のある風景」に馴染んできた人にも、ぜひ手にとって見てほしい。
太郎生誕百年の今年発行された関連書籍は、個人的にはいま一つ「不作」だったと思っている。
ファンとしては期待が大きすぎたのかもしれない。
どうせ入手するならこれらの本の方がいい。
更に踏み込んで太郎について考えてみたい場合には、以下の書籍がお勧め。
●「謎解き太陽の塔」石井匠(幻冬舎新書)
二つの最高傑作「太陽の塔」と「明日の神話」に関して、太郎の経歴や過去の作品からかなり緻密な解読が試されており、参考になる。
ただ、あまりに「後付け」できれいに説明しすぎな感はある。
岡本太郎はその著作等を読むと相当な「知性の人」と言う印象を受けるが、身近だった人の書いたものを読むと、まさに芸術家そのものの「感性の人」と言う姿が浮かび上がってくる。
上掲本のような解読も納得がいき、当然「有り」だと思うのだが、太郎本人が自覚してそのように作品を制作したとは限らないと思う。
結果として絵画や立体作品を辿ると、深層意識にそのような流れがあったとは言えるかもしれない。
太郎の、とくに著作について考える場合、パートナーであった岡本敏子の存在をどう考えるかということが、重要になってくるはずだ。

2011年12月26日
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