ここまで、手描き鳥瞰図の個人的体験からはじまり、誰もが楽しめる3DCG鳥瞰図の紹介、そして再び手描きの価値を再認識するに至った過程を紹介してみた。
日本でも古くは各種古地図や絵図、神仏参詣曼荼羅など、様々な鳥瞰図が描かれてきた。やがて測量に基づく正確な地形図の登場を経て、写実表現や作図的な正確さを加味した新しい鳥瞰図が描かれるようになった。
以下の書籍にはそうした様々な絵師たちの作品が、詳細な解説とともに紹介されている。
●「パノラマ地図の世界―自然を街を見渡す楽しみ」
●「吉田初三郎のパノラマ地図―大正・昭和の鳥瞰図絵師」
(ともに平凡社別冊太陽シリーズ)
錚々たる鳥瞰図絵師の中でも真打と言えるのは、大正・昭和の時代に活躍した吉田初三郎だろう。
写実的なイラスト表現を基調としながらも、実物から大きく変形され、異常なまでにわかりやすく編集されたその図像。図像の多くには(実際に見えるかどうかにかかわりなく)遠景に富士山が描かれており、中にはハワイ諸島などのおよそありえない遠景が描かれているものまで存在する。
実際の観光地の魅力を過剰に強調し、画面上で再構成することにより、ほとんど「別物」の世界が開陳されている。
こんな豊穣な妄想宇宙を見せられると、私などはまだまだ「嘘つきパワー」や「妄想パワー」が不足しているなと、反省ひとしきりなのであった…
【追記】
「吉田初三郎」で検索すると、かなり大きな画像を紹介しているサイトも見つかりますね。
2006年09月23日
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