いよいよヒガンバナも盛りを迎えようとしている。
大和葛城の里は、この時期ヒガンバナが素晴らしい。
二上山から葛城・金剛山にかけての山麓は、五木寛之の小説「風の王国」の舞台にもなった場所で、役行者ゆかりの地域でもある。秋の田園風景は懐かしく、どこか怖いところもある。
西に山を控えた葛城の里は、日暮れが早く、闇が深い。

村の小さな社にも夕暮れ時には怪しの気が漂う。
年を経た神木の影はこちらに掴みかかってくるようだ。
暗くなってくると、自然に足がはやまって家路を急いだ子供の頃を思い出す。
太陽が沈むのは西方極楽浄土の方向。お彼岸の時期にはそれが完全に一致する。
そう言えば昔、よくヒガンバナを木の枝で薙ぎ払って遊んだ。
子供らしい残酷さで、面白いように切れる真っ赤な花の首を散乱させた。
今でも秋の野を歩くと、子供が刎ねたらしいヒガンバナが散らばっているのを見かける。
