
南垂水公園には不動尊が祀られている。葛城の修験者はここに参拝後、葛城二十八宿の第一宿、虎島の序品窟へと向かう。私もそれにならって出発する。
島東北部には、観光向きの見所は少ない。登ってすぐに第四砲台跡へと向かう分かれ道があるが、この第四砲台跡はほとんど保守されておらず、また第三砲台跡とも似た構造なので、個人的にはお勧めしない。
観光施設等がない分、島の自然を生で感じることが出来るのは確かだ。
山道をしばらく歩くと、左手にあたる北側の木々の間から神島が見えてくる。波間にギザギザした岩が見え、その上にこんもりした緑が盛り上がり、所々白骨のような朽木が突き出している。正面には意味ありげに、ぽつんと小さな鳥居が立っている。なんとも異様な眺めだ。

神話の中のアワシマ、スクナヒコナ、神功皇后、役行者、神剣など多くの物語が、この小さな島に蓄積されて怪しの気を放っている。
出発から徒歩約三十分、少し足を伸ばして深蛇池にも寄っておこう。役行者に封じられた大蛇が深蛇大王となって、今も鎮まる伝説の湿地帯だ。

どろりとした赤茶色の水面と、一面に生い茂る湿地性植物は、南西部の蛇ヶ池を何倍にも拡大した広さを誇っている。

今ここで大蛇が鎌首をもたげてきたとしても、かえってその方が自然に思えるような風景が広がる。

奥へ奥へと分け入ると、蒲浦海岸に出ることができる。

友ヶ島は現在でも「漂着の島」だ。神話の時代と変わることなく、「この世」から流れ出たモノは流れ着き、溜まる。
いつか朽ち果てて消え去る流木などの自然物は良い。
しかしそれに混じって流れ着くプラスチックや発砲スチロールなどの廃棄物は、いつまでも残り続けて、やがて友ヶ島の海岸沿いを埋め尽くすだろう。
友ヶ島だけでなく、海の彼方にあるはずの「常世の国」にも廃棄物は届いているかもしれない。その返礼として今後「常世の国」から「この世」に流れ着くのは、いかなる異形の神だろうか。