今週もNHK大河の「平清盛」を観た。
一応今後も観ていくつもりなのだが、う〜ん、、、まだちょっと判断に困っている。
演出方針はどうやら史実考証をがっちり固めるのではなく、物語内の雰囲気優先で流していく方向性であることは間違いなさそうだ。
歴史表現の参考に、という半ば不純な動機で観ている私の狙いからは、やや外れつつあるようだ。
TVドラマはあくまで娯楽なのだから、本来、物語さえ面白ければOKなのだが、肝心の「物語」自体も、あまり私の好みの傾向では無さそうにも思えてきている。
この作品、「平安末期をモデルにした異世界ファンタジー」っぽくなってきていると思うのだが、もう少し現実よりの方が、個人的には好みだ。
中世瀬戸内海の交易、海戦、芸能、雑種賤民など、扱われているモチーフが物凄くそそられるだけに、観方が厳しくなってしまっているのかもしれない。
主演の松山ケンイチについては、これまで若手の中ではかなり役作りをやりこむ方だと思っていたのだが、今回のドラマではまだあまりのり切れていない感じがする。
脚本に現実味が乏しいから役作りがやりにくいのではないか、、、という声がのど元まで出かかるのだが、まだまだ序盤なので断言はせずに飲み込んでおく。
今後面白くなったらまた記事にしたいが、さてどうなるか。
自分のブログでは面白いことを書きたいのが当然で、なるべくならば「つまらないものをつまらないという記事」は書きたくない。
再度取り上げる機会があることを望みたい。
基本的に一般視聴者は好き勝手に作品をあげつらってOKだと思うのだが、先週の第一回放送の後、おかしなニュースが流れた。
兵庫県の井戸知事がわざわざ記者会見の時間を割いて、大河ドラマ「平清盛」の演出方針に文句を言ったというのだ。
主に映像の「見た目」についてクレームをつけたようなのだが、私の感想では、脚本はともかくそうしたビジュアル面では「けっこう頑張っているな」と思った。
知事がドラマの個人的感想を口にしても別にかまわないが、今後ドラマの舞台になるであろう神戸近辺の観光誘致にからめて、NHKに改善申し入れをすることも視野に入れていると言う。
ニュースを一読して「このおっさんは頭がおかしいのか?」と思った。
県知事と言う公人が、TVドラマの内容について自分の意図するところと違うという理由で、演出方針に圧力をかけ、それが異常なことだという自覚が無いらしいことに不気味さすら感じた。
そもそも、神戸に源平時代を偲ばせる観光向けの史跡なんて、あるのだろうか。
辛うじて須磨あたりの景勝がそれにあたるかもしれないが、今回のドラマで兵庫県に観光誘致しようとしてもちょっと無理があるだろう。
あまりにバカバカしいニュースだったので「俺の感覚の方が狂ってるのか?」と不安に襲われたが、案の定、県庁に抗議が殺到したということだ。
ただ、ちょっと気になったのが、知事のクレームに対するNHK側の反応だ。
報道によると、以下のように答えたらしい。
「映像表現の進歩で、ドラマはリアルさを追求する方向に進んでおり、それを望む視聴者も多い。清盛の成長に合わせ、貴族社会の華やかな映像も出てくるので、今後を楽しみにしてほしい」
?????
え?
今回のドラマって制作側は「リアル志向」のつもりなのか???
再び自分の感覚に不安を覚える私であった。。。
話変わって。
ドラマの中の効果音に、けっこう琵琶の音が使われている。
琵琶と言えば「平家物語」なので、平氏を主人公したドラマの中で琵琶が使われるとなんとなく自然な感じがしてしまうのだが、考えてみれば琵琶法師による「平家」語りは鎌倉時代以降の芸能だ。
だから現代のドラマの中で時代の雰囲気を醸す「効果音」として使われるのは別にいいのだが、平氏の時代に「平家琵琶」的な音色が存在したわけではないことは、一応確認しておいた方がいい。
当時存在したのは、雅楽に使用される琵琶と、経文の伴奏としての琵琶で、後の世に成立した平家琵琶は後者の系統に入ると理解している。
盲僧による琵琶と語りは、経文の場合だけでなく平曲の場合も宗教的色合いが強かったのだ。
私はここ二年ほど、琵琶法師に興味を持ち始めていて、ぼちぼち資料を集め始めている。
まだまだ理解は十分ではないが、琵琶の音を伴奏に使った音遊びも試作(あくまで試作!)してみたことがある。
今の時点でお勧めの琵琶法師関連資料は、以下のもの。
●「琵琶法師―“異界”を語る人びと」兵藤裕己(岩波新書)
●「肥後の琵琶弾き 山鹿良之の世界~語りと神事~」山鹿良之
そう言えばながらく工事中のままのカテゴリ「琵琶法師」も、そろそろ起動しとかないと……
2012年01月15日
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>平安末期をモデルにした異世界ファンタジー
>扱われているモチーフが物凄くそそられるだけに、観方が厳しくなってしまっている
>「つまらないものをつまらないという記事」は書きたくない
>今回のドラマって制作側は「リアル志向」のつもりなのか???
うんうん、と何度も頷いてしまいました。
一方で「リアル」をうたい文句にしていながら、
首をかしげざるを得ないような「異世界ファンタジー」(しかもパクリだらけ)なので、
見ていて混乱するんだと思います。
私もこの時代が好きなので、
戦国・幕末大河が続いた後だけに期待する物が大きかったのですが、
それだけに落胆の度合いも激しくて、残念です。
残り9ヶ月もあるのにどうするんでしょうか・・・どこかで持ち直してくれればよいのですが。
琵琶法師や今様のお話、勉強になります。
「異界」を語る人々、というサブタイトルに惹かれます。書店で探してみますね。
大河ドラマ「平清盛」は、清盛が成長して棟梁になり、多少落ち着いたらマシになるのではないかと、淡い期待をしています(笑)
ただ、その段階になると、このドラマの数少ない見所の中井貴一さんの出番がなくなってしまいますね……
ドラマの後半に、それぞれに成長した清盛、義朝、後白河院が、重みのある政治闘争をしてくれると良いのですが。
「琵琶法師―“異界”を語る人びと」については、新しい記事でも触れていますので、よろしければご覧ください。
カテゴリ「琵琶法師」を開くと読めます。
ほんの内容も面白いですが、付属しているDVDは、一見の価値ありだと思います。