2006年09月30日
友ヶ島見聞録6
深蛇池から道を戻して、いよいよ虎島へ。
要塞島だった当時、沖ノ島と虎島は石とコンクリートの通路で連結されていた。現在その通路は崩壊しており、通常は徒歩で虎島に渡ることは出来ない。大潮の時期の午後1時〜2時頃、潮が引いて渡り易くなるので、その時を狙うしかない。通路が出来る以前の時代も、そんな感じだったのだろう。
潮が引いてくると、あちこちに岩が浮き出してきて、まるで新しい陸地が次々に生まれてくるように見える。こういう磯の眺めも、国生み神話の原風景だったのではないだろうか。波に洗われる岩の窪みには、小さな生き物たちが息づいている。
虎島には役行者ゆかりの二つの岩窟、序品窟と観念窟がある。
まずは虎島の頂にある第六砲台跡にのぼり、島の東端の断崖絶壁の上に立つ。恐る恐る下を覗き込んでみると、斜め45度の岩盤が荒波にそそり立っている。
修験者の皆さんが観念窟へ行くときには、このような斜面をロープづたいに降りていくはずだが、素人は 絶 対 に そんなマネをしてはいけない!(ネットで紹介しているので特に念を押しておく)
観念窟の場所ははっきりわからなかったが、おそらく下の写真上部に見える岩の穴のことだと思われる。
もう一つの岩窟・序品窟へは、虎島南西側の海沿いルートで行けるが、こちらも「誰にでも行ける」という場所ではないので、お勧めはしない。行者さんたちが今も大切にしている信仰の場なので、失礼のないように、あくまで自己責任で。
ごろごろと巨岩が連続する岩場を、虫のようにしがみつきながらじわじわと進む。岩肌がざらざらしていて滑らないのがせめてもの救いだが、それでも浮石一つ踏めば海に落下してしまうし、よくよく岩の目を読まなければすぐに進退窮まってしまう。
写真の白い柱状サインのすぐ右の穴が、岩窟の入り口だ。柱状サイン裏面にはお約束の「世界人類が平和でありますように」の文字がある。なんというか、こんな場所にまでたてにきたその情熱には感服する。
序品窟は人一人がやっと通れるくらいの、ものすごく狭い岩の裂け目だった。実は私は閉所恐怖症の気があるのだが、勇気を奮って足を踏み入れる。
岩窟というよりは岩の裂け目なので、中は真っ暗ではない。それでも一人で未知の聖地に足を踏み入れる緊張感に、私の胸は高鳴る。
内部に鎮座する経塚には、数百年の間に唱えられた般若心経や真言の類がしみこんでいるように感じる。思わず合掌すると頭の中にそうした聖なる音の響きがコダマしてくるような気がする。
私は夢中で這いずりながら、先に見える光を目指す。確かこういうのを「胎内潜り」と言うんだっけ。岩窟の雰囲気に圧倒された私の頭の中には、出産にまつわるボキャブラリーがぐるぐる渦巻く。ひ・ひ・ふーと呼吸し、「うまれるー」とか呟きながら、光に向かって這って行く。
反対側の裂け目から出るまでは、時間にしてみるとほんの数分。出てみると目の前には太平洋へと続く大海原が広がっていた。大母神・イザナミから生まれた神々が、最初に見たのはこんな風景だったのだろうか。
小さな岩窟だったが、感じたことはとても多かった。
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック