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2012年03月18日

「今様」を今読むなら

 NHK大河「平清盛」だが、相変わらずビミョーな感じが続いている。
 はっきり「面白い!」と他人に勧めることはできないが、観るのを放棄するには至らず、一応毎回観てはいる。
 部分部分では「これは」と思うシーンも無いではない。
 武士を含めた下層社会の猥雑さやエネルギー等は、リアルとは言えないだろうがそれなりに出ている。貴族や「王家」(この表現も適切ではないのだろうけど)の権力闘争のドロドロ感、気色悪さも、それなりに出ている。
 しかしやはり脚本がダメっぽい。そろそろ導入部の段階を過ぎているので、これはもう自分なりに評価を固めてしまってよいところだろう。
 とくに上記の下層社会と上流階級のメンバーが交錯する場面で、「荒唐無稽」という他ない表現が頻出する。この不況の中、予算だけはちゃんと出るのだから、最低限の時代考証はクリアーしてくれないとNHK大河である意味がない。

 あと、ちょっと気づいたのが、OP映像について。
 けっこうがんばっていて良い出来だと思うのだが、それにもかかわらず、なんとなく印象の悪さを感じていた。
 その原因が、このあいだ観ていてわかった。
 OP映像の途中で、実写映像が加工されて、マンガのペンの描線のようなものが重なるシーンが何回かある。
 どこかで観たことがあると思っていたら、以前公開された映画DEVILMANに似たような表現があったことを思い出した。
 映画DEVILMANと言えば、日本映画史上に燦然と輝く一大糞映画で、原作マンガ「デビルマン」ファンを絶望のズンドコに叩き込んだことで悪名高い。
 当時、私も某巨大掲示板の当該スレッドで、叩き&傷の舐め合いで大いに盛り上がった記憶がある。
 本来、出来が良いはずの「平清盛」OP映像なのに、何故か良い印象が無かったのは、過去のトラウマが無意識のうちに反映されていたようなのだ。
 今回の大河OPは東映アニメがCG制作しているようなのだが、もしかしたら映画DEVILMANのスタッフと重なっているのだろうか?
 ともかく、いくら糞映画に使われていた表現であっても、それ自体に罪はない。
 この点については、自分の印象を改めておこう。

 清盛のOP(だけ)は、文句なしにカッコいいッス!
 
 
 大河ドラマでは、松田翔太演じる雅仁親王(後の後白河院)が存在感を増してきている。
 後白河院と言えば今様狂いで「梁塵秘抄」の編著者だ。
 世俗の権力闘争の真っただ中にありながら、熊野信仰が極めて厚く、芸能分野では身分制度を超越した活動を繰り広げた、異能の法王。
 日本の芸能史においては、最重要人物の一人だろう。
 大河ドラマ「清盛」のおかげで、改めて後白河院に対する興味が出てきて、色々本を漁り始めている。

 最近手にした中に「梁塵秘抄」を、「超現代語訳」したものを見つけた。
 

●「梁塵秘抄」後白河法皇(編集),川村湊(翻訳)(光文社古典新訳文庫)

 著者は日本の中世思想を中心に、多くの興味深い本を刊行していて、最近は原発関連のものも出している。
 守備範囲が私の興味の範囲とけっこう重なっていて、本屋で「面白そうだ」と思って手に取るとこの人の本だったりすることが多く、けっこう気になる人だ。

 今回の「梁塵秘抄」の現代語訳では、今様を昭和歌謡の歌詞のような感じで読み替えてあり、賛否のわかれるところだろう。
 しかし、現存する梁塵秘抄の中から100のうたを紹介しており、元歌とその解説も十分に載せられているので、試みとしては面白いと思う。
 後白河院による「口伝集」からも、一部口語訳が載せられており、各所には当時の絵巻物から採った図も掲載されているので、梁塵秘抄の全体像をざっと理解するには良い本だと思った。

 ドラマで今様に興味を持った人には、最初に手に取る一冊目としてお勧め。
posted by 九郎 at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | カミノオトズレ | 更新情報をチェックする
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