NHK大河「平清盛」だが、相変わらずビミョーな感じが続いている。
はっきり「面白い!」と他人に勧めることはできないが、観るのを放棄するには至らず、一応毎回観てはいる。
部分部分では「これは」と思うシーンも無いではない。
武士を含めた下層社会の猥雑さやエネルギー等は、リアルとは言えないだろうがそれなりに出ている。貴族や「王家」(この表現も適切ではないのだろうけど)の権力闘争のドロドロ感、気色悪さも、それなりに出ている。
しかしやはり脚本がダメっぽい。そろそろ導入部の段階を過ぎているので、これはもう自分なりに評価を固めてしまってよいところだろう。
とくに上記の下層社会と上流階級のメンバーが交錯する場面で、「荒唐無稽」という他ない表現が頻出する。この不況の中、予算だけはちゃんと出るのだから、最低限の時代考証はクリアーしてくれないとNHK大河である意味がない。
あと、ちょっと気づいたのが、OP映像について。
けっこうがんばっていて良い出来だと思うのだが、それにもかかわらず、なんとなく印象の悪さを感じていた。
その原因が、このあいだ観ていてわかった。
OP映像の途中で、実写映像が加工されて、マンガのペンの描線のようなものが重なるシーンが何回かある。
どこかで観たことがあると思っていたら、以前公開された映画DEVILMANに似たような表現があったことを思い出した。
映画DEVILMANと言えば、日本映画史上に燦然と輝く一大糞映画で、原作マンガ「デビルマン」ファンを絶望のズンドコに叩き込んだことで悪名高い。
当時、私も某巨大掲示板の当該スレッドで、叩き&傷の舐め合いで大いに盛り上がった記憶がある。
本来、出来が良いはずの「平清盛」OP映像なのに、何故か良い印象が無かったのは、過去のトラウマが無意識のうちに反映されていたようなのだ。
今回の大河OPは東映アニメがCG制作しているようなのだが、もしかしたら映画DEVILMANのスタッフと重なっているのだろうか?
ともかく、いくら糞映画に使われていた表現であっても、それ自体に罪はない。
この点については、自分の印象を改めておこう。
清盛のOP(だけ)は、文句なしにカッコいいッス!
大河ドラマでは、松田翔太演じる雅仁親王(後の後白河院)が存在感を増してきている。
後白河院と言えば今様狂いで「梁塵秘抄」の編著者だ。
世俗の権力闘争の真っただ中にありながら、熊野信仰が極めて厚く、芸能分野では身分制度を超越した活動を繰り広げた、異能の法王。
日本の芸能史においては、最重要人物の一人だろう。
大河ドラマ「清盛」のおかげで、改めて後白河院に対する興味が出てきて、色々本を漁り始めている。
最近手にした中に「梁塵秘抄」を、「超現代語訳」したものを見つけた。
●「梁塵秘抄」後白河法皇(編集),川村湊(翻訳)(光文社古典新訳文庫)
著者は日本の中世思想を中心に、多くの興味深い本を刊行していて、最近は原発関連のものも出している。
守備範囲が私の興味の範囲とけっこう重なっていて、本屋で「面白そうだ」と思って手に取るとこの人の本だったりすることが多く、けっこう気になる人だ。
今回の「梁塵秘抄」の現代語訳では、今様を昭和歌謡の歌詞のような感じで読み替えてあり、賛否のわかれるところだろう。
しかし、現存する梁塵秘抄の中から100のうたを紹介しており、元歌とその解説も十分に載せられているので、試みとしては面白いと思う。
後白河院による「口伝集」からも、一部口語訳が載せられており、各所には当時の絵巻物から採った図も掲載されているので、梁塵秘抄の全体像をざっと理解するには良い本だと思った。
ドラマで今様に興味を持った人には、最初に手に取る一冊目としてお勧め。

2012年03月18日
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