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2006年11月06日

切り絵師 宮田雅之

 どんなジャンルにも言えることだが、その世界の「申し子」としか表現できないような、凄腕を持った第一人者と言うものは存在する。このカテゴリ「紙(カミ)」で取り上げた河合豊彰氏はまさに「おり紙の申し子」だし、切り絵のジャンルで言えば今回紹介する宮田雅之氏がそうだ。



●「宮田雅之の切り絵八犬伝」(平凡社別冊太陽)
 宮田雅之氏の没後、追悼記念として発行された一冊。
 氏の刀さばきが刻み込む妖艶な描線が「八犬伝」の世界と奇跡的にマッチして、ページを開けば凄まじいばかりの「怪しの世界」が繰り広げられる。

 大胆な構図は動画を見るごとく、
 規則的に刻まれた直線は建築物を見るごとく、
 極限まで究めた省略は抽象絵画を思わせ、
 流麗な曲線は無音の音楽を響かせる。



 絵描きの端くれとして氏の作品を鑑賞すると、無駄な線を極力省く精神力に、つくづく頭が下がってしまう。
 自分の腕を誇りたいのは絵描きの本能のようなもの。紙を切りつつ己の技をも断つような静かな気迫、なかなか真似できるものではない。
posted by 九郎 at 23:18| Comment(2) | TrackBack(0) | 紙(カミ) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
どうも。ここではお初です。
宮田雅之ですか。いいっすね。
私がこの人を最初に認識したのはTVドラマのタイトル画で、その後山田風太郎の八犬伝の連載を新聞の縮刷で読んだ程度ですが。
この別冊太陽は手に入れようと思いつつもう5年ほど手付かずなのですが、内容はどうですかね。質は云わずもがななので専ら量的な話ですけれど。
Posted by shin-ohara at 2006年11月07日 17:28
>shin-oharaさん

コメントありがとうございます。
宮田雅之さんの画集は、確か別冊太陽で4冊ほど出ています。この「八犬伝」は一冊丸ごと1テーマで堪能でき、150ページ中9割がたカラー図版で埋め尽くされています。
特に折込ページでは、紙の厚みの影まで鮮明に印刷されていて、現物の雰囲気を想像することができます。
「買い」でしょう!
Posted by 九郎 at 2006年11月08日 00:21
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