2006年11月21日

極楽往生源大夫10

 日が暮れて、ある寺に辿り着いた。
 僧が事情を説明して尋ねると、寺の住職が興奮した口調で、その日からちょうど七日前の出来事を語った。
 住職の話によると、その夜、異形の入道が突然寺の門を叩いたという。

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「自分はかくのごとく発願し、阿弥陀仏を呼ばわりながら、脇目もふらず後ろも振り返らずに、ただ西へ西へと歩いてきました。これから高い峰を越えようとしており申す。願わくば、わずかばかりの食べ物を分けていただけませぬか」
 住職が言われるままに干飯を与えると「多し」と言って、ほんのわずかだけを紙に包み、懐に入れた。もう日が暮れるので今夜だけは泊まっていけばどうかとの勧めも断り、寺を出て行ったという。
 一通り住職の語りを聞いた僧は、沈痛な面持ちで寺を後にした。

     (続く)
posted by 九郎 at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 中世物語 | 更新情報をチェックする
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