2006年12月10日

奇妙な記憶2

 幼い頃の奇妙な記憶には、どこか怪異なトーンが混入している。
 前回紹介した「電車ごっこ」の通園風景の中、記憶に刻まれた、忘れられない怖い思い出がある。

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 二、三人の大人に引率された幼児の集団が、川沿いの土手から降りて集落にさしかかる。幼稚園の近くなので、他の通園グループも集まってきている。
 園児の弟か妹だろうか、小さな子供を抱いた母親が行列を見送っている。抱かれた子供は「おやつのカール」をしゃぶりながら(まだ噛めない)、お兄さんお姉さんたちの通園風景を熱心に眺めている。
 幼児の私を含む「電車ごっこ」の列が、その母子横を通りすぎようとした時、突然悲鳴が上がった。
「ヒキツケ! ヒキツケや! 誰か梅酒持ってきて!」
 異様な光景だった。
 それまで「おやつのカール」をしゃぶっていた小さな子供が、母親の腕の中で痙攣している。母親は必死の形相で叫んでいる。
 どうやら子供が「ヒキツケ」を起こしたので、気付けに梅酒を持ってきてくれと叫んでいるらしい。そのような民間療法があったのだろうか?
 幼児の私は恐怖に凍りつき、その光景は記憶の底に焼き付けられる。
 私の中で「おやつのカール」と「梅酒」は、「ヒキツケ」の不吉なイメージと結びついた。その後、小学校の高学年ぐらいになるまで、私は「おやつのカール」を食べることをひそかに恐れていた。カールおじさんの登場するほのぼのとしたあのテレビCMも、どこか不気味な思いで眺めていた。
 梅酒についてもあまりよい印象はなく、大人になってからも自分から進んで飲む気は起きなかった。しかし、どうやら自分の忌避衝動の源泉が幼時の思い込みにあるらしいことを自覚してからは、特に嫌うこともなくなった。
 一つ、大人になったかもしれない(笑)
posted by 九郎 at 23:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 原風景 | 更新情報をチェックする
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