2006年12月16日
奇妙な記憶3
幼児の頃の私は、昼間は主に母方の祖父母の家で過ごしていた。
母方の祖父は大工で、趣味で木彫をよくやっており、祖父母宅の玄関スペースには膨大な作品群が常設展示してあった。仏像や天狗、竜などポピュラーな題材も多かったが、それ以外の独自の作品もあった。
まだまだ自然豊かな地域だったので、祖父はよく外に出かけては、気に入った木材などを拾ってきて、それに細工を施したりしていた。切り出してきた怪しい形状の珍木や木の瘤の類が、祖父の手によって更に得体の知れない妖怪に変身していった。
幼児だった私は、そんな制作現場を眺めるのが好きで、祖父の操るノミが様々な形を削りだしていく様子を、ずっと飽きずに観察していた。
私にとっての祖父は、山に入っては色々な面白いものを持ち帰り、それを自在に操って怪しい妖怪達に改造できる「凄い人」だった。
そして私は、いつか自分も同じことをするのだと心に決めていた。
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック