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2012年12月18日

至急戦術ヲ変更スベシ

 現在も毎週金曜日、夕刻から行われている電力会社前の抗議行動。
 今の住居から小一時間ほどの所に支店があるので、私も毎週ではないが、行けるときには顔を出すようにしている。
 各所で場の雰囲気は様々で、大阪の関電本店前などは、時には殺伐とした空気の漂うこともあるようだ。
 私がたまに顔を出す支店前は比較的小人数で、わりあい牧歌的な雰囲気が漂っている。
 最近の抗議行動らしく、鳴りモノが充実しているサウンドデモ形式なので、参加するとけっこう楽しめる。
 鳴りモノ以外にも各自、自作のプラカードや光モノ、自作衣装など、それぞれに楽しみを見つけながら寒空の長丁場を乗り切っている。

 抗議行動時のシュプレヒコールは「原発反対!」「再稼働反対!」「子どもを守ろう!」等、様々なのだが、中には私個人としては少々違和感を感じつつ唱和しているコールもある。

 今、日本国中の電力会社前で行われている金曜抗議行動は、基本的には「脱原発」のワンテーマ、シングルイシューである。
 それは運動の中心にあたる金曜官邸前抗議を取り仕切る皆さんの、冷徹で的確な戦略が基本になっている。
 あくまで「脱原発」ワンテーマに絞り、他のスローガンを控えることで、これまでの「運動」にありがちだった党派色のハードルを取り払い、誰もが参加し易い空気を作ることに成功したのだ。
 これならば右も左も中間も「原発事故の惨禍から愛すべき国土と子孫を守る」という大義のもとに、他の主張の差異はそのままに、結集することができる。
 何よりも物理的な「数」を集めて見せることで、この国の中枢に巣食う原子力マフィアどもに圧力をかけることができるのだ。
 もちろんワンテーマに限定することで生じるマイナスも無いではないだろうが、今現在「数」を集めるためには、これ以上の戦術は見つからない。

 各地の金曜抗議行動も、基本的には官邸前の戦術を踏襲しているので、コールに「脱原発」以外のものが叫ばれることは基本的には無い。
 しかし、私がたまに参加した時に、やや違和感を持ちながらも唱和している一連のコールがある。
 それは、原発の代替エネルギーとして、いわゆる自然エネルギー(太陽光、風力、地熱など)を推進しようと叫ぶタイプのシュプレヒコールだ。
 正直、「あんまり唱和したくないな」と思いながら我慢して声を出している。
 そのタイプのコールの間は、鳴りモノだけにしてノドを休ませたりもしている。
 というのは、「原発の代替に自然エネルギー」などと言っている間は、経済性を盾に取った原発推進派の主張に必ず負けることがわかり切っているからだ。
 その兆候は、既に今回の衆院選に現れていると思う。
 選挙が近づくごとに電力会社は「原発を止めたことによるコスト高」という詐欺紛いのコメントを繰り返し、報道は何の検証も無く電力会社の言い分を一方的に垂れ流し続けたことは記憶に新しい。
 そのためかどうか、ついに今回の選挙では原発の是非が直接争点化することは無かった。

 広く実用化されている「自然エネルギー」には太陽光と風力があり、脱原発運動の中の「環境派」の皆さんも、主にその二つを念頭にコールをしていらっしゃることと思う。(他に地熱や潮力などもあるが、まだ「広く実用化」と言うほどにはなっていない)
 しかし、太陽光と風力は、現状かなりコストが高く、今後も大幅に安くなる見込みは無い。
 最近もてはやされがちなメガソーラーや大規模風力発電は、排出ガスと言う一点だけ見れば優秀だが、総合的には必ずしも環境には優しくないし、むしろ自然豊かな地帯を占拠し、大規模に破壊してしまう。
 いわゆる「自然エネルギー」は今後数十年にわたって、エネルギー供給の主役になることは難しいし、もし無理押しすればとんでもない電力料金の高騰と自然破壊を生む。
 せいぜい補助的電源として小規模な太陽光や風力を、都市部に限定して設置するのが望ましい。
 「電力料金が大幅に高くなっても自然エネルギーに転換すべし!」などという主張は、ごく限られたマニアにしか受け入れられる余地はなく、一般大衆や企業経営者を説得することはまったく不可能だ。

 わざわざそんな無理な主張をしなくても、電力料金を上げず、環境負荷も少なく「脱原発」を進める技術は、既に実用化済みなのだ。
 従来型の大規模発電ならエネルギー効率が原発の二倍、ガスコンバインドサイクル発電。
 小規模な自家発電ならマイクロガスタービン。
 そして、各家庭や各ビルで発電時に発生する排熱も同時利用するコージェネレーション。
 これら低コストでクリーン、まっとうなエネルギー供給体制こそ国を挙げて推進し、基幹産業にまで育てて雇用を生み出し、世界に輸出するために、公共投資をすべき分野なのだ。

 抗議デモに参加し、運動を中心的に支えてくださっているであろう環境派の皆さん。
 同じデモの仲間には、ウヨクの皆さんもサヨクの皆さんもいて、それぞれに少しづつ主張を我慢しながら参加なさっています。
 皆さんも少し、「自然エネルギーへの転換」の主張を抑え気味にしませんか?
 それを過度に主張することは、脱原発に賛同する人数を減らすことになります。
 原子力マフィアどもの思うつぼです。
 
【参考文献】
posted by 九郎 at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | | 更新情報をチェックする
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