少し前の話になるが、2006年11月15日、漫画家の石川賢さんが亡くなられた。享年58歳。代表作は「ゲッターロボ」「魔界転生」など。いくつかの作品、シリーズものが未完となっており、大変に残念だ。
石川賢は、永井豪率いるダイナミック・プロの、もう一人の柱として活躍してきた。初期にはテーマ、絵柄ともに永井豪の強い影響下にあったけれども、90年代以降には独自の作品世界を構築していった。
私が石川賢の作品と始めて出会ったのは、小学校低学年の頃だった。当時の私は「ウルトラマン」シリーズにはまり切っており、怪獣図鑑をはじめ、様々な書籍や玩具を買い与えられていた。その中に「ウルトラマンタロウ」を漫画化した単行本があり、作者が石川賢だったのだ。
普通、この手のコミカライズ本は、子供向けの毒にも薬にもならない代物が多いのだが、石川賢の手による「ウルトラマンタロウ」は全く違った。そもそものウルトラマンシリーズの設定を大きく逸脱し、ある意味「暴走」した結果、異様な迫力を持ったハードSF作品として作り込まれていた。
私は子供心に「何か見てはいけないものを見てしまった」ような一種の恐怖を感じつつ、石川版「タロウ」の暴力と怪奇と哲学の世界に耽溺した。当時から「絵描き」であった私は、TV版とは違う石川賢の絵柄を熱心に模写し、少しでもその迫力を習得しようと研鑽を積んだ。だから私の絵柄の原点は、石川賢と永井豪のダイナミック・プロの作品世界にあると言える。
かつて私を虜にした石川版「タロウ」は、復刊されて現在でも入手可能である。機会があればご一読を。また、私の思う全盛期の最高傑作としては「魔界転生」「ゲッターロボ號」を推したい。練り上げられた漫画家としての手腕と、石川賢の暴走する内宇宙が、絶妙のバランスをもって混在する傑作である。
自分の絵柄の原点になった漫画家へのオマージュをこめて、「5000光年の虎」の主人公を一枚描き、石川賢さんへの追悼としたい。
2007年01月13日
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