今日は春分の日、春のお彼岸の中日だ。
お彼岸が来るたびに、ある海辺の情景を思い出す。
和歌山県和歌浦にある雑賀崎という場所に「ハナガフル」という不思議な現象があるという。
春と秋のお彼岸の頃、日没時に高台に登ると、沈む太陽から様々な色の光の玉が降ってくることがあるのだそうだ。伝説の類ではなく、地元ではたまに目撃されている自然現象らしい。
秋のお彼岸の時期に、現地に足を運んでみたことがある。
和歌浦の静かな観光エリアを抜け、雑賀崎へ。
入り組んだ小さな湾には漁港があり、高台に登る斜面には民家がひしめくように密集している。
うっかりすると他所様の居間に入り込んでしまいそうな路地の連続、くれぐれも地元の人に失礼の無いように、そっと通りすぎる。
海に臨む斜面の静かな静かな集落、聞き耳を立てているわけではないけれども、おばあちゃんたちの世間話が聞こえてくる。
「今日はハナガフルで、はよう登って見てきたらええ
赤やら紫やらの光がぐーるぐーるまわってな
飛んで来よるんやで
はよう登って見てきたらええわ……」
少々耳が遠い者同士の会話は自然とボリュームが上がり、何度も同じ言葉が繰り返される。近所中に「ハナフリ」の告知が響いている……
案の定と言うか、結局そのときは「ハナフリ」の現象を見ることが出来なかったのだが、真西の水平線に沈むお彼岸の素晴らしい夕日は見た。
実は私は、斜面の集落でおばあちゃんたちの世間話を聞けた時点で、ほとんど満足してしまっていたのだけれども。
和歌浦については、他にも様々にカタリたいことがある。
追々このカテゴリ「和歌浦」で紹介して行きたいと思う。