
今夜の帰り道、満月と桜に誘われて、いつもは通らない道を通った。月と外灯に照らされる桜並木を眺めながら、缶コーヒーでも飲むかとコンビニに立ち寄った。
レジに行くと、どこか見覚えのあるおじさんの顔。
すぐに思い当たる。
「……すみません、以前○○におられませんでしたか?」
私が声をかけると、おじさんが笑って言った。
「ああ、見たことのある人だと思いましたよ」
昔住んでいた街の、近所にあったコンビニの顔馴染みの店員さんだったのだ。
私の記憶は一気に蘇ってくる。
当時はターザン山本編集長率いる「週刊プロレス」がピークを迎えていた頃で、毎週神懸り的な名作コピーや記事を連発していた「週プロ」に、私は耽溺しきっていた。発売日が待ち遠しくて、毎週木曜日の早朝には入荷したばかりの「週プロ」を目当てにコンビニに走っていた。
ある木曜日の朝、「週プロ」をレジに持っていくと、おじさんが声をかけてきた。
「あのー、よかったら、これ差し上げますよ」
それは、当時まだ健在だったジャイアント馬場さんが大きくプリントされた、全日本プロレスのポスターだった。一枚あまっていたものを、毎週「週プロ」を買いに来る若造のためにとっておいてくれていたらしい。
その後も、おじさんには何度か「お土産」をもらったりしたものだ。
その店舗が閉まって以来、おじさんの行方もまったく知らなかったのだが、場所も時間も離れた、こんな思いがけない再会があろうとは。
ものすごい偶然の再会だったのですね。
絵の方も何か懐かしい気分の漂っているような……。
そうなんですよ。物凄い偶然で、「生きてるとこういうこともあるんだな」と思いました。