戦国時代の和歌山市一帯を「雑賀庄」と呼んだ。ここを拠点に戦国最強の鉄砲部隊を率いて活躍した地侍の大将が、雑賀孫市(さいか まごいち)だ。
この日、地元の英雄をアピールする「孫市まつり」が開催された。今年で第三回目と言うことで、私は初めて見に行った。
鎧武者の行列は、全て手作り!
それぞれに思い入れを凝らした作品を身につけて、晴れの舞台を堪能しているようだ。
無骨な鎧武者だけでなく、時代装束を身につけたグループや、地元の太鼓の演奏隊も続く。可愛らしく微笑ましい「鎧保育園児」の一群もあったし、槍を構えた少年部隊の行進もあった。
市内を練り歩き、祭会場の浄土真宗鷺森別院へ到着すると、火縄銃の演武もあった。「放て!」の号令とともに、
ど ぱ ー ん
と、轟音が耳をつんざき、粉雪のような硝煙が鼻をつく。
たった数丁でこの迫力。戦国時代の合戦で数百が乱れ打たれた時のことは、ちょっと想像もつかない。
会場では、孫市の時代に食されたであろう鍋物を再現した「孫市鍋」が無料で振舞われた。
梅の風味の利いた、素朴な味わい。
地元では鎧武者行列を組むための、自作鎧教室も開かれているらしい。詳しく作り方を解説した展示もあった。
こちらは保育園児が身につけていた鎧。
畳素材とカップ麺の兜が楽しい。
当日は他にも様々なパフォーマンスが披露された。孫市をテーマにした楽曲を演奏するロックバンド(CDも出ていたのでもちろんGET!)や、丸太からその場でチェーンソーで作品を削りだす作品は、もちろん「雑賀孫市」。
この孫市像は、司馬遼太郎の小説「尻啖え孫市」の表紙絵を元にしていると思われる。
孫市は史料が少なく、実像のわかりにくい人物なので、この小説で活写された鮮烈な孫市の姿が、やはり感情移入の対象になりやすい。