2014年08月31日

最初の愛読書

 いよいよ夏休みも最後である。
 もうとっくの昔に大人なので「夏休み」と表現するのもおかしいのだが、いまだになんとなくそんな気分が残存している。
 中高生の頃、「8月最後の三日間」には特別の思い入れがあったせいかもしれない。
 当時私は、柄にもなく中高一貫の私立受験校に通っていた。
 夏休みは通常の40日間の約半分しかなくて、お盆明けの週にはもう後半の夏期補習が始まっていた。
 夏休み気分もそのあたりでほとんど終わっていたのだが、最後に三日間だけおまけのように連休がもらえていた。
 どうせ宿題が山ほど残っていたりするので、まともにこなそうとすると休んだり遊んだりできない。
 だから私の場合は、はじめから9月1日に宿題提出することは諦めていた。
 昔のことなので、厳しい体罰の横行するリアル「男塾」みたいなキツい学校だった。
 宿題を提出しないとマジで地獄を見ることになるのだが、地獄には地獄なりの抜け道はあるものだ。
 始業式の日の朝、優秀で慈悲深い友人の宿題を見せてもらうとか、どうしても間に合わないなら「持ってくるのを忘れた」と強弁するとかなんとか、けっこうノラリクラリと9月3日くらいまでは誤魔化せるものなのだ。

 夏休みの宿題は9月1日から手をつける。
 良い子は決してマネをしないように。

 まあ、少し言い訳すると、休みの間宿題もせずにずっと怠けていたわけではない。
 私の場合は高一の頃から「一人美術部」の部長兼会計兼部員だったので、夏休み明けすぐの文化祭に向けて、教室一つ分を一人で作品でうめなければならないという任務があったのだ。
 だから厳しい中にも理解のある幾人かの先生は、私の手抜き丸出しの提出物も、そっと黙認してくれていたようだ。
 大人になってから、「ああ、あの時見逃してくれてたんやなあ」と思い当たった件がいくつかある。
 先生方、その節はどうもすみませんでした……

 ともかく、今日で8月もおわり。
 日帰りで行ける範囲でも、夏休みらしい企画がいくつか目につく。
 ちょっと気になる展示が二つ。

「機動戦士ガンダム展」THE ART OF GUNDAM
 生誕80周年記念「藤子・F・不二雄展」 

 興味は十分にあるのだが、混んでるんだろうなと思うと、意欲が萎える。
 ガンダム展の方は去年「大河原邦男展」を観に行ったからもういいかと言う気もする。
 F先生展の方は、展示品の中に少年の頃の藤子不二雄コンビが手作りした小冊子、あの「小太陽」があると聞くと、ざわざわと蠢くものがある。
 きっと実物を観たら、その後ろに銀河のような背景が透けて見えるはずなのだ(これはA先生の「まんが道」ネタ)
 こちらの展示期間はまだ長いので、夏休みが終わったら行ってみようか……

 F先生は、私が生まれてはじめて認識した「好きな作家」だった。
 小学一年生の頃、確か風邪で休んでいたときに、親が小学舘の学習雑誌「小学一年生」を買ってきてくれた。
 そこではじめて「ドラえもん」を読み、ハマってしまったのだ。
 確か付録の小冊子がドラえもん特集で、藤子不二雄先生が二人コンビであることや、ドラえもん創作の秘密、漫画の絵の描き方などが解説されていたと思う。
 私がかなり意識的に絵を描き始めたのも、その小冊子の解説あたりがきっかけかもしれない。

 映画「STAND BY ME ドラえもん」の方は、この間観てきた。
 観る前は「ドラえもんはわざわざ3D表現にしなくてもいいのではないか」と思っていたのだが、実際に観てみると製作陣の意図はよく理解できた。
 物凄く緻密に再現された70年代から80年代の風景に、大人はみんな気づくだろう。
 露骨に郷愁を誘う表現ではないのだが、文房具や家電や家具、住宅の作りが、さりげなく「かつて観た風景」なのだ。
 サブタイトル「すべての、子ども経験者のみなさんへ。」の意図は、たぶんそのあたりにも込められている。
 少子化の現代、子どもをメインターゲットにした映画でも、大人の観客を意識しなければ興業が成り立たないという事情もあろう。

 ストーリーの方は、膨大なドラえもん短編の中から、上手くヒストリーの部分を抽出して「感動的に」構成されている。
 限られた尺の中でベストな構成になっていて感心したのだが、同時に「こういう風に感動的にまとめてしまわないのがF先生だったのだが」とも思った。
 F先生の持ち味は、星新一にも似た知的なSF短編だ。
 登場人物の「感情」の部分は、ちゃんと存在するのだが、普段は抑え気味で、たまにちらっと覗かれる程度であるのが心地よい。
 今回の映画は本当に良くできているけれども、F先生の作風とは少しトーンが違う気がするのだ。

 小学低学年の頃、ドラえもんからはじまってF先生(当時はあくまで藤子不二雄先生だったが)の作品を色々読み漁っていた。
 中でも特に好きだったのが、「モジャ公」だった。



 作品としてはかなりマイナーな部類に入ると思うが、SF作家としてのF先生の持ち味が遺憾なく発揮されている。
 Amazonのレビューを見てみると、この作品をF先生の最高傑作に推す声もあり、深くうなずいてしまう。
 久々に読み返してみたいなあ。


 8月最後の一日、宿題に追われるも良し、ぼんやり過ごすのもまた良し。
posted by 九郎 at 06:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 神仏絵図覚書 | 更新情報をチェックする
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