2014年09月06日

改稿 マンガ表現の近未来1

(以前、マンガ表現の近未来「電脳マヴォ」という記事を書いた。改稿して新しく投稿したい)
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 日本でのマンガ表現の主流は、B5サイズの雑誌に安価な紙質と印刷で掲載し、後に単行本にまとめられることを前提にしてきた。
 主な読者は「子供」であり、お小遣いで買える範囲の価格設定がなされたのだ。
 画面作りは基本的には「B5サイズでの印刷」向けになっており、それを元に原稿サイズや描き込みの度合いも進化してきた。
 B4サイズの原稿用紙に白黒のペン画、中間色はスクリーントーンを使用するというスタイルは、安価な印刷方式に合わせた「版下原稿」の作成作業で、多人数での分業がやり易いというメリットもあった。

 週刊少年マンガ誌が次々に創刊され、日本のマンガが一気に読者数を増やした70年代、コマ割りは4段組(1ページあたりの平均8コマ)が基本だった。当時から今も続く作品、例えば「ドラえもん」などの画面構成を思い出すとイメージしやすいだろう。
 その後、80年代半ばを過ぎると、より写実的な絵柄が流行しはじめる。
 作画密度が高くなってくると1コマの絵は大きくなり、3段組(1ページあたり平均6コマ)が主流になった。
 作品の内容も「ストーリー重視」から「大きな誌面での迫力あるアクション描写」が中心になった。
 より派手な画面構成の追求で、タチキリや見開きが多用され、ページ数のわりにストーリーが進行しにくくなった。
 その結果、人気作品は軒並み数十巻を超える大長編になっていった。

 ビジネスモデルとしてのマンガは、こうした一部の「大長編ヒット作」に支えられてきた。
 いくつか人気作品を確保しておけば、雑誌自体は赤字でも単行本で儲けを出すことができる。アニメ化されて関連商品の収益が出れば、さらにビジネスとしては大きくなる。
 マンガの売り上げが出版社の経営を支え、余力で他の分野の本を刊行するという仕組みすら出来上がってくる。

 ところが、こうしたビジネスモデルは90年代にピークを迎えて以降、完全に頭打ちになっている。
 雑誌の発行部数はメジャー誌ですらピーク時から大きく減らし、ここ数年は歴史のある老舗雑誌でも休刊が相次ぐようになってきた。
 単行本の売り上げはごく一部の超人気作に集中するようになり、売れる作品と売れない作品の二極化が進行している。
 名の知られた中堅以上の有名漫画家ですら、作品発表の場を失いつつあるのが現状だ。

 原因はいくつか考えられる。
 根本的には少子化で、マンガのメイン読者である子どもの数が減っていることが挙げられるだろう。
 ゲームなどで娯楽が多様化し、子ども向けのエンタメの主役がマンガではなくなったことも大きい。
 長引く景気低迷で、子どもの頃からマンガに親しんできた中年以上の読者層ですら、マンガに使う金は減ってきている。
 そもそも連載数十年、数十巻から百巻を超えるような大長編の全ては読みきれないし、買いきれない。部屋に並べるスペースもない。

 ビジネスが縮小すると、週刊誌の作品内容は保守化する。
 既存の人気作品は終わらないよう引き延ばされ、よく似たタイプの定型化された作品ばかりが並ぶようになる。
 ますます読者は固定化され、新規の読者が入り込みにくくなる悪循環が続く。

 一方で、アマチュア作家やオリジナリティを求める新人、名のある作家ですら、メジャー誌ではなく同人やネットの世界に活路を求める流れが出てきている。
 インターネットを活用すれば、一昔前の自費出版や同人誌よりも、自分の作品をはるかに広く公開することができる。
 元手がかからない電子出版であれば、少ない発行部数でも収益が出せる可能性がある。
 電子出版は、出版社を通して刊行される紙の本の印税よりも、一冊あたりの作者の取り分がかなり大きいのだ。
 他に職業を持ちながら、独自の作品世界を築くアマチュア作家が今確実に増えつつある。

 スマホや小型タブレットなどの携帯読書端末の急速な発達、普及が、そうした傾向を後押しし、加速させている。
(つづく)
posted by 九郎 at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 神仏絵図覚書 | 更新情報をチェックする
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