2007年05月06日
お神楽を見る
お神楽を見る機会があった。岡山県に伝わる備中神楽だ。
本当は現地で夜の神事としてのお神楽を見るのが一番なのだけれど、私が見たのは昼間の舞台公演。
それでも途中休憩を挟んで五時間弱、代表的な五つの演目が並んだ本格的なお神楽だった。
公演前、舞台を見ると、暗闇の中に装置がぽっかり浮かび上がっている。広い舞台の真ん中に十畳の畳が敷かれており、その空間が荒縄と白い和紙で区切られている。日本の民俗信仰の中の、聖なる空間の表現。
十畳敷きの奥には幕が張られている。
あるときは緞帳、あるときはソデ幕、またあるときは劇中の「天の岩戸」になるシンプルな装置。
ふと、子供の頃の「ごっこ遊び」を思い出す。
遊び場の地面につま先で引いた線が世界を区切る。たったそれだけの行為なのに、ごっこ遊びの最中にはその線が強い呪力をもって、子供達の心に結界を形成する。
誰かが一本の木を指差して、それが世界の中心だと言葉を放てば、その言霊は子供達の心に共有されて、侵すことの出来ないルールとなる。
その場限りで生まれては消える世界観。
客席には徐々に人が集まってくる。誰に教えられなくても知っているお神楽の世界観の中に、舞台装置を見ただけで巻き込まれてしまう。
私の隣に座った見ず知らずの御婦人が、私の腕をつついてくる。振り返ってみると、「飴ちゃんあげる」と小さな袋入りのキャンディーを手渡してくれる。
そーゆー年でもないのだが(苦笑)、ありがたく頂戴して口に含む。
甘さが口に広がると、そろそろ開演時間が近づいてくる……
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