材料費が安く、それなりに簡単な試作品として一応完成はしたが、いくつか課題も残った。
音階を奏でるための指板のフレット部分にけっこう手間がかかり、その手間のわりに肝心の音色が今一つだったのだ。
同じ構造でより作りやすいものをと考え、フレットを刻む必要のない三味線または三線として完成させたのが、前回記事の試作品だ。
かなり手間を省き、予算も使用した材料費だけだと500円以内に収まりそうで、音色もオモチャとしては意外と良いものができた。
ただ、ウクレレファンとしては少し不完全燃焼の感があった。
子供向けの工作という縛りからは一旦離れてみたらどうだろうか?
シガーボックスギターの外観を備え、100均の箱で作ったというシャレも効いていて、なおかつそれなりに弾けるオモチャウクレレは作れないか?
ということで作ってみたのが、以下の作品。

既製品の木箱を使うメリットは、各部サイズや水平垂直がそこそこ整っているので、素人木工で難しい部分をパスできるということだ。
ネックの角材を貫通させるタイプであれば、難易度の高い取り付け角度の問題もクリアーしやすい。
今回はサウンドホールがボディ中央にあるオーソドックスなものにしたかったので、ネックは貫通させずに外付けすることにした。

まず、100均で適当な木箱を物色する。
その木箱に最低限の補強を入れてから、サウンドホールを開けたベニヤで「フタ」する。
そして、前からよく作っていた以下のウクレレキットの余りパーツの中からネックを引っ張り出してみる。
現在、定価で2000円を超えてしまったこのキットだが、数年前まで1500円、十年前なら1200円程度だった。
当時買っていたパーツが、手元にまだかなり残っているので、独自の工作に使うことができる。
元のネックはヘッドの先端部分に曲線の飾りがあるのだが、今回は「箱レレ」なのでシンプルなデザインにカットしなおす。
次はいよいよ、ネックとボディの接続である。
ウクレレをキットで制作する場合ここが一番神経を使うところなのだが、水平垂直が一応守られた既製品の直方体とネックパーツなので、かなり楽をできた。
本体で楽をした分、指板には時間をかけた。
いつものウクレレキットのままでは安っぽいプラスティック部品なので、板と真鍮線から新造したのだ。
キットの指板のサイズとフレット間隔をそのまま5mm板に写しとり、瞬間接着剤でそれぞれカットした1mm の真鍮線をチマチマ貼っていく。
真鍮線の断面そのままでは演奏時に左手が血まみれになりそうなので、角をヤスリでこれもチマチマと削り落としていく。
こう書くといかにも精密工作をしている風に見えるかもしれないが、さにあらず。
「本物」の楽器であれば板の素材からちゃんと選び、専用のフレットワイヤーというものを丹念に打ち込んでいくのだが、私の工作はあくまで「なんちゃって」のオモチャなので、そこまではできないのだ。
一応見た目だけはそれっぽく見える指板ができたので、ボディの方も「寄せ木細工」風に各種ニスで塗り分けてみた。
記事中の小さな写真で見るとけっこうカッコ良く見えると思うが、実物を至近距離で見るとかなり粗もある(笑)
通常のウクレレと比べると体積的に一回りは小さいので、すこしでも音量を稼ぐために硬めの弦を張って完成!
で、肝心の音色はというと、、、、、
やっぱり安っぽかった!
一応遊び程度の演奏はできるが、音はシャカシャカとなんとも軽量級だ。
1万円台の一応楽器レベルのウクレレの音をステレオラジカセだとすると、今回の「箱レレ」はAM放送をポケットラジオで聴いている感じと言えば、ニュアンスが伝わるだろうか。
使用した100均木箱の木材がスカスカであることも原因だが、どうやら何よりもいけないのが側面のスリットを塞がなかったことらしい。
サウンドホールの一つとして機能するかとも思ってそのままにしたのだが、ボディの箱鳴りがそのスリット部分で分断されているようなのだ。
比較してみると、安物とは言え上掲のウクレレキットは、合板素材ばかりなのにそれなり鳴るよう、うまく設計されていることもわかった。
色々欠点はあるものの、この箱レレ、実はけっこう気に入っている。
小さく軽いので携帯に便利だし、音が小さめであることも、指使いの練習用には適している。
何よりも(自作なので当たり前だが)ルックスが好み通りなので、ついつい手にとって爪弾いてしまうのだ。
このあたりが、手作り楽器の真骨頂である。